空の彼方の虹
131
翌朝、ラウ達は戦場へと向かった。
「大丈夫かな?」
不安そうな表情でキラが呟く。
「わかりません」
今回ばかりは、とレイは言い返す。
「あちらの数が多すぎます」
これだけ大規模な戦闘は初めてだと思うから、と彼は続ける。
「ラウも、自分の手の届く範囲だけならば間違いなく勝てると思います。しかし、今回はそうではない者達が多すぎる」
彼らがどのような行動を取るかがわからない。レイはそう続けた。
「もっとも、イレギュラーと言えばサハクのお二人もそうですが」
実を言えば、彼らが一番怖い。レイはそう言う。
「否定できないかも」
彼らが何をしでかすかわからないと言うのはキラも同じだ。その結果、どれだけ戦場が混乱するだろうか。
「それに関しては、フォローのしようがないな」
カガリも話しに加わってくる。
「カナードさんだって、何をしでかすか」
暴れ足りないようだし、と彼女は続けた。
「と言っても、まだここにいると言うことは心配ないと言うことかな?」
そう言いながらカガリは首をひねっている。
「逆に、カナードさんがここにいるからこそギナ様が何をしているのかがわからないと思うんですよ」
レイはそう言って苦笑を浮かべた。
「もっとも、あの方ですから心配していないという面もあるのですが」
彼はさらにそう付け加える。
「……少なくとも、ラウさんだけは連れ帰ってくれると思うけど」
しかし、とキラがため息をつく。
「おもしろがって、持ってきた試作品を全部試しそう」
その結果、どのような惨事を引き起こすことになるか。考えるだけで怖い。彼はさらにそう付け加えた。
「……それは間違いなく、やるな」
自分でもやりたい、とカガリも言う。
「カガリさん」
「いかないと約束したからな! ここでおとなしくしている」
キラのことも心配だし、と口にしながら、彼女はキラの頭を自分の方へ引き寄せた。
「カガリ」
何を、とキラは慌てて問いかける。
「とりあえず、おとなしく抱きしめられていろ」
笑いながら、彼女はキラの首に回した腕に力を込めたのがわかった。
「苦しいって!」
キラがそう言いながらもがいている。その様子に、手を出すべきかどうかレイは悩む。
「手加減はしているぞ」
そう言ってカガリは笑った。
「なぁ、キラ?」
彼女は腕の中のキラに問いかけるが、答えは返ってこない。
「カガリさん。本気で苦しそうですよ、キラさん」
これは助け出した方がいいのかもしれない。そう判断をして、レイは腰を浮かせる。
「カガリ。キラをいじめるんじゃない」
だが、それよりも早くカナードが彼女の頭を指先で小突いていた。
「どこから現れたんですか!」
カガリが頭を抑えながら振り向く。それでも、片腕でキラの体を拘束し続けているあたり、さすがと言うべきなのか。
「ドアからに決まっているだろう」
平然とカナードは言い返す。
「ともかく、キラを放せ」
話はそれからだ、と彼は続ける。それに、カガリは渋々と言った様子で従った。