空の彼方の虹

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 さすがに時間がかかりすぎているような気がしてならない。だが、それをキラに告げることはできないだろう。
「……カガリ、けがをしてないかな?」
 そんなことを考えていれば、キラのつぶやきが耳に届く。
「ギナ様が一緒なら大丈夫だと思うけど……でも、カガリだし」
 キラの中で、カガリはいったいどのような位置づけになっているのだろうか。確認したくなってしまう。
 もっとも、キラが言いたいこともわかるのだ。
「まぁ、大丈夫だろう」
 苦笑とともにカナードは言葉を口にする。
「ザフトも、あいつとギナ様を傷つけるわけにはいかないだろうからな」
 もっとも、ギナに触れることは難しいだろうが。そう続けた。
「カガリがけがをしても、ギナ様なら抱えて逃げられるだろうし」
 自分がキラを抱えて逃げるように、とカナードは微笑む。
「それでも、あの方がザフトに負けるはずがない」
 力強く断言をすれば、キラも同意をするように首を縦に振ってみせる。
「まぁ、カガリの場合、少し懲りてもいいと思うんだがな」
 そうすれば、カガリも本土でおとなしくしているのではないか。彼女が本土にいれば、ウズミ達の気苦労も減るに決まっている。
 カナードがそう言ったときだ。彼の耳はこちらに近づいてくる足音をとらえる。
「……兄さん……」
 もちろん、同等の能力を持っているキラもそれに気づいた。
「気づかなくてもよかったのにな」
 そうすればごまかせたのに、と心の中だけで付け加える。
「ともかく、動くな。ここは安全だ」
 自分がそばにいるから、とカナードは言う。それにキラも小さくうなずいて見せた。
「辛いようなら、目を閉じていろ」
 その間に、すべてを終わらせてみせる。そう続けた。
「大丈夫?」
 即座にキラはこう問いかけてくる。
「当たり前だろう?」
 俺を誰だと思っている、と耳元でささやいてやった。

「来ているのは一人か二人かだろう。そのくらいで俺を排除しようとするなら、ギナ様レベルの実力が必要だぞ」
 そんな人間がごろごろしていてたまるか。言外にそう付け加えた。
「……確かに、それは怖いかも」
 自分もいやだ、とキラも言う。
「そうだろう?」
 にやりと笑いながらカナードはキラの髪をなでる。
「だから、お前は安心していろ」
 こう言いながら、キラの髪をなでているのとは反対側の手で外部モニターを操作する。
 いったい、何者が近づいてきているのか。それだけは確認しなければいけないのだ。
 もっとも、ギナ達でないことだけは確実だろうが。彼らならば、事前に連絡をよこすはずだ。
 そんなことを考えながらカメラを切り替えていく。
 何度かそれを繰り返していけば、ようやく人影を確認できた。その瞬間、脱力感に襲われる。
「……兄さん、どうしたの?」
 表に出していないのに、やはりキラにはわかるらしい。それが自分達のつながりなのか、と苦笑とともに心の中で呟く。
「どうやら、一人はレイのようだ」
 もう一人は髪の色が暗い。と言うことはラウではなくギルバートだろう。
「……どうやら隠し通路を通ってきたようだな」
 と言うことは、あちらに行けば外に出られるのだろう。いざというときのために覚えておいた方がいいな、とカナードは判断する。
「……レイとギルさんだね」
 モニターに視線を向けていたキラがそう呟く。
「声、かけた方がいいのかな?」
 視線をカナードに戻して彼は問いかけてきた。
「放っておけ。万が一のこともあるからな」
 何よりも、今しばらくキラと二人だけでいたい。カナードは苦笑とともにそう呟いていた。


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最遊釈厄伝