空の彼方の虹

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 まさか、こんなに早くキラと再会できるとは思わなかった。
 そう考えると同時に、何かあったのではないか、とカナードは考える。おそらく、ギナがキラから目を離すのをいやがるような事態が、だ。
「キラ」
 それを目の前の子供には気づかせたくないのだろうと言うこともわかっている。
「何?」
 カナードの呼びかけに、キラは言葉を返してきた。
「来い」
 そう言ってカナードは自分の膝を叩いてみせる。それにキラは小さく笑うとまっすぐに駆け寄ってきた。
「兄さん」
 そのまま、飛びつくように小さな体が腕の中に収まる。
「少しやせたか?」
 抱き上げたときに、腕にかかる重みが違うような気がしてカナードは問いかけた。
「そう、かな?」
 言葉を貸してくるキラの視線が泳いでいる。と言うことは、本人も自覚しているのだろう。
「どんなときでもしっかりと食べろ、と言っただろう?」
 カナードは少し厳しい声音でそう言った。
「食べてるよ。ギナ様に確認してもいいもん」
 でも、体重が増えないのだ。キラはため息とともにそう言う。
「食べないと、レイに怒られるし」
 彼は小声でそう付け加えた。
「あぁ、あいつがいたな」
 キラのそばにいたくて仕方がないというお子様そのにが、とカナードは笑った。それでも、レイはキラを傷つけることはない。だから、安心してそばに置いておける。
「と言うことは、精神的なものか」
 確かに、一緒に暮らすようになってからこんなに長時間離れていたことはなかった。
「……それとも、こちらに来る前にか?」
 その可能性はあるな、と心の中で付け加える。
「ラウさんの船に保護されたんだっけ? なら、あれがいたのか」
 カガリがそう言いながら、キラの顔をのぞき込むような姿勢を取った。
「でも、ニコルさん達がかばってくれたから」
 怖がっていたら、とキラは小さな声で付け加える。やはり、あれがキラの中でかなり大きな傷になっていたのだろう。
「ニコル? あぁ、あのかわいい顔の奴か」
 ラクスも『彼は信用できる』と言っていたな、とカガリは続ける。
「他には、誰がいた?」
 この言葉に、キラは少し考え込む。
「ミゲルさんとディアッカさんは、よくかばってくれた。イザークさんは言うことは厳しかったけど、本とかかしてくれたし……他の人もみんな、優しくしてくれたよ」
 つまり、問題だったのはあれだけだ、と言うことだろう。
 そして、とカナードは心の中で呟く。
 プラント本国にはアスランの父パトリック・ザラがいる。あの男は、きっと、何かに気づいているはずだ。
「……カガリ」
「了解。ラクスに連絡を取っておく」
 即座に彼女はそう言い返してくる。
「後は……あっちにいるミナ様とムウさんに連絡を取った方がいいのかな? お父様経由でも何でも」
 彼女はさらに言葉を重ねた。
「ムウさん? 帰ってきたの?」
 キラが嬉しそうにそう問いかけてくる。
「ギナ様がこちらに来ているからな。ミナ様にしてみれば、こき使える人間が欲しかったんだろう」
 今頃、あれこれと押しつけられているのではないか? とカナードは笑う。
「あぁ、あり得る」
 カガリがそう言ってうなずいて見せた。
「それよりもキラ。何か食べるか?」
 簡単なおやつぐらいなら用意できるぞ、と彼女は言う。
「……兄さんの作ったパンケーキが食べたい」
 小さな声でキラがこうねだってくる。
「わかった。今用意してきてやる」
 こういうところは、本当にかわいい。何でも言うことを聞いてきてやる、と思う。
「カガリと遊んでいろ」
 この言葉に、キラは小さくうなずいて見せた。


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最遊釈厄伝