空の彼方の虹

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「……何を持ってきたんですか?」
 大きな包みを抱えてきたギナに向かってカガリは問いかける。よくよく見れば、それを包んでいるのは彼のマントだとわかった。
「カナードが来たら教えよう」
 にやり、と意味ありげにギナは笑う。
 こういうときの彼は、ある意味要注意だ。
 何か、自分達をいじめる計画をしているに決まっている。
 しかし、だ。
 だからといって逆らうこともできない。
「……呼んできます」
 連絡は行っているだろうが、自分も呼びに行った方がいいような気がする。何よりも、こういうときのギナと一緒にいるといいようにいじられるのはわかりきっているのだ。
「好きにするがよい」
 ギナはあっさりと許可を出してくれる。それはどうしてなのか。これも、嫌がらせの一環なのかと思わずにいられない。
 だが、一度出してしまった言葉を取り消すことはできない。
 こうなれば、行動あるのみ。そう判断すると、カガリは立ち上がった。そして、部屋を出て行く。
「あまり時間をかける出ないぞ」
 そんな彼女の背中にこんな言葉が届く。
「わかっています」
 本当に彼は何を考えているのだろうか。
「頼むから、これ以上、カナードさんを刺激しないでくださいよ」
 廊下に出ると同時に、彼女はそう呟いていた。

 カガリの姿がドアの向こうに消えたところで、ギナはキラを覆っていたマントを外した。
「苦しかったであろう? すまなかったの」
 彼はそう言って笑う。
「いえ。大丈夫です」
 でも、と彼がさらに言葉を重ねようとしたときだ。ギナが持っていた端末がメールの着信を告げる。
「誰だ?」
 何かあったのか、と言いながら、ギナはポケットから端末を取り出す。
「デュランダルからか……何があった?」
 直接連絡をよこすとは珍しい。そう呟きながら、彼は端末を操作してメールを開いた。
 次の瞬間、彼は無意識に渋面を作る。
「何がありました?」
 即座にキラがこう問いかけてきた。
「ラウの心配性が爆発しただけだ。そばまで付いてきていたらしい」
 その報告をギルバートにしたらしい。それに対する感想だ。言葉とともにギナは苦笑を浮かべる。
「少々あきれただけよ」
 しかし、と彼は続けた。
「そういうことであれば、レイを連れてくればよかったかな?」
「……レイも一緒ですか」
 何を考えているんだろう、とキラは首をかしげる。
「お前のことが心配なだけであろう」
 カナードでも同じことをするだろう、と彼は続けた。
「そうでしょうか」
 さらにキラは考え込むような表情を作る。
「……同じことではないな。あれは堂々と同行するか」
 キラならば、いくらでも説得できると考えているはずだ。彼はそう続ける。
「何を言っているんですか!」
 まるでそのセリフを待っていたかのようにカナードが室内に飛び込んでくる。
「兄さん?」
 そんな彼に、キラが嬉しそうに呼びかけた。それだけでカナードの表情が柔らかくなる。
「今回のことは内密だからの。外で騒ぎだてするでないぞ?」
 しばらく、お前たちだけにしてやろう。ギナはそう言いながら、キラの頭に手を置く。
「好きなだけ甘えるがよい」
 言葉とともにギナは立ち上がる。
「ギナ様?」
「仕事もせねばならぬからな。カガリではまだまだ無理だしの」
 そこで一緒に遊んでいるがいい。そう付け加えれば、彼女は頬を膨らませた。だが、それが現実だとわかっているのだろう。それ以上は何も言わない。
「後のことは任せたぞ?」
 カナードに向かってそう告げる。それだけで、普段の彼ならばきちんと状況を把握してくれた。しかし、今日はどうだろうか。傍目にも浮かれているのがよくわかる。
 それでも、キラが関わることならば冷静に判断を下すだろう。そう判断をして、部屋を後にした。


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最遊釈厄伝