空の彼方の虹

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 ヴェサリウスとガモフがディセンベルへのドックへ入港した。その連絡があったのは先ほどのことだ。
「ラウ達が帰ってきますね」
 レイが明るい口調でそう告げる。
「ラウさん、元気だよね」
 カナードとカガリのことで胃を壊していないよね? とキラが言ってきた。
「大丈夫ですよ。ラウの胃はすごく丈夫ですから」
 そのくらいで壊れるはずがない。彼はきっぱりと言い切った。
「なら、いいけど……」
 本当なのだろうか、とは言わずにキラは微笑む。
「胃が丈夫でないと、ムウとあれこれしているなんて無理ですよ?」
 さらに軍人として評議会議院ともやり合っている。そういう人間の胃壁や心臓が弱いはずはないだろう。レイはさらにそう付け加えた。
「……それって、ほめているの?」
 それともけなしているのか。思わずそう聞き返したくなる。
「ほめているつもりですけど」
 そういう点は見習うべきだろう。レイは真顔でそう告げる。
「なら、いいんだけどね」
 仲がいい証拠だろうから、とキラはほっとしたように付け加えた。
「ラウとギルだともっとすごいですよ。見ていてけんかをしているようにしか思えませんから」
 自分でも、とレイがいうのだ。どんな光景なのだろうか。
「……何か、見たいような、見てはいけないよううな……」  そんな感じだね、とキラは正直な感想を口にする。
「俺もそう言うときはさっさと逃げますから」
 つきあっていられない、とレイは笑う。
「いいの、それで」
「いいんです。周囲に被害が出そうなときは、執事さんが止めてくれますから」
 彼ならばやってくれるだろう。キラはあっさりと納得をする。
「ともかく、ラウが帰ってくるまでもう少し時間がありますから……それまで散歩でもしませんか?」
 気分転換になるだろう、と彼は言う。
「でも、外に出ても大丈夫かな?」
 また襲われたりしないだろうか。言外にそう問いかける。
「大丈夫だと思いますよ。セキュリティのランクを最高まで上げていますし……裏庭には家族以外は入れません」
 そこならば大丈夫だろう。レイはそう言う。
「なんなら、おやつも用意してもらいましょう」
 ちょうどいい時間だし、と彼は続けた。
「……お茶ぐらいなら、いいかな?」
 そんなにおなかはすいていない。だが、せっかくのお誘いだから、とキラは言い返す。
「それでいいです」
 にっこりと微笑む彼には何か他の策があるのか。それとも、目の前に並べてしまえば勝ちだと思っているのか。あっさりとうなずいてみせる。
「じゃ、行きましょう」
 にっこりと微笑みながら彼はさらに言葉を重ねた。同時に、手をさしのべてくる。
「うん」
 小さくうなずくと、キラはそっとその手に自分のそれを重ねた。その瞬間、レイの手がしっかりとキラの手を握りしめてくる。
「そんなにしなくても、逃げないよ?」
 キラはそう主張した。
「わかってます。俺がそうしたいだけです」
 だめですか? と彼が視線で問いかけてくる。
「なら、いいけど」
 でも、握るなら女の子の手の方がいいのではないか。レイなら女の子達に人気だろうに。
「キラさんの手、小さいですよね?」
 レイが爆弾発言をしてくれる。
「そんなことないよ」
 同じくらいだ、とキラは言い返す。他のことであれば無視できても、やはりこういうことは無理だ。
「じゃ、比べてみましょう」
 向こうで、と付け加えると同時に、彼はキラの手を引っ張って歩き出す。
「レイ!」
 そのまま引きずられるようにキラもついていった。


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最遊釈厄伝