空の彼方の虹
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同じ報告はオーブ経由でギナの元にも届いていた。
「とりあえず、ムウはアメノミハシラへと向かったか」
それは当然だろう。後問題があるとすればストライクに乗り込んでザフトと敵対をしたカナードの処遇かもしれない。
だが、それもなんとでもなる。
「カガリが残っているからな」
プラントにおけるラクス・クラインと同じ立場だと言える以上、その護衛についていたカナードの行動は当然だと言い切れるのだ。
それでもプラント側が彼を罰しようとするなら、それなりの対処をとるしかない。
「さて、プラントはどう出るかな」
そう呟くと視線を移動させる。
「それよりも優先しなければいけないことがあると思いますが?」
ギルバートが苦笑とともにこう言ってきた。
「あの子に何と説明される予定ですか?」
二人がプラントに来ることを、と言われてギナは少し考え込む。
「地球軍に悪者になってもらえばよかろう」
それとセイランか。
キラをごまかす手段ならいくらでもある。
「まぁ、事前にあれらと打ち合わせは必要だろうがな」
そのための便宜は図ってくれるであろう? とギナは続けた。
「会えるようにはしておきましょう」
早急に、とギルバートはうなずく。
「もっとも、あの隊の隊長はラウですからね。事前に連絡が取れる可能性はありますよ」
もっとも、と彼は続ける。
「下手に動くと後が厄介でしょうが……」
「ならば、貴様のアドレスからラウに連絡を入れさせてもらおうか」
それならば、自分からだとばれないのではないか。ギナは言外にそう告げた。
「あの二人に言付けを頼むぐらいはかまわぬであろう? それと、ラクス・クラインか」
彼女にも話を通しておいた方がいいだろう。
「すべては説明しなくても、察してくれるだろうからな」
とりあえず、こちらの説明に口裏を合わせてくれれば、それでいい。
「ならば、後はラウですか」
それならば、とギルバートは続ける。
「私の方から彼に説明のメールを送りましょう。後は、彼があちらに話をしてくれるでしょう」
その方が一番無難ではないか。そう続けた。
「なるほどな。事前に内容を確認させてくれるならかまわぬが」
ギナはそう告げる。
「もちろんです」
事前にお見せします、とギルバートはうなずく。
「しかし、一息に事態が動いたの」
いったい何が起きたのか。ギナはそう呟く。
「私にもわかりません。あちらの艦の内部で何かがあったようですが……」
個人的には、知りたくないような気がする。ギルバートはそう続けた。あるいは、彼はその原因を推測しているのかもしれない。
「一番あり得るのは、カナードあたりがしびれを切らしたということかの」
だが、アメノミハシラにいるムウの様子から判断をして、それはあり得ないと思える。
「後は、カガリか」
この言葉を耳にしたギルバートが困ったような表情を作った。
と言うことは、ラクス・クラインが関わっているのかもしれない。たおやかな、と言える彼女にそんなことができるのか。
「まぁ、人は見かけによらぬからの」
苦笑とともにギナはそう呟く。
「詳しい話は、彼らがついてから聞かせてもらおう」
いろいろと楽しいことになりそうだ。彼の言葉に、ギルバートの渋面がさらに深まった。