空の彼方の虹

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「……足つきを発見しました」
 ラクスではなく、とニコルが報告をしてくる。
「そうか」
 ラウはそう言ってうなずく。同時に『さて、どうしたものか』と心の中だけで付け加えた。
 攻撃を加えるのは簡単だ。
 しかし、それではあちらの二人にいろいろと不都合が出てくる。もっとも、オーブから手を回せばいいだけのことだろう。しかし、それでは時間がかかる。
「隊長?」
 考え込んでいたからか。ニコルが不審そうに問いかけてきた。
「足つきにラクス嬢が乗っている可能性があるかもしれない。そう考えただけだよ」
 ここで遭遇したと言うことは、と続ける。
「……確かに、可能性はありますね」
 ラウの言葉に、ニコルもうなずいて見せた。
「そうなると、うかつに攻撃できませんね」
 こう言ってきたのはミゲルだ。
「あの方に危険が及んではいけないからね」
 ラクス・クラインは、今、ここで失ってはいけない人材だ。間違いなくプラントにおける彼女の存在価値はアスランよりも上だろう。
「だが、逆に厄介なことになる」
 さて、どうするべきか。小声でそう続けた。
「あちらが降伏してくれれば一番簡単なのだがね」
 第八艦隊が出撃している以上、それはないだろう。
「つついて確認するか」
 実のところ、自分は彼女があの艦に乗り込んでいることを知っている。しかし、それがどうしてかを教えることができない以上、黙っているしかない。
「問題は、イザーク達が目的を忘れないかどうかだろうが」
「まぁ、そのときはそのときです。何とかしますって」
 ミゲルがそう言う。
「そうだね。ともかく、確認が最優先かな?」
 本人達にはしっかりと言い含めてるしかないか。そうでなければ、カナードに叩き落とされるだけだ。それもいい経験ではないか。そう心の中で呟いていた。

 艦内の空気に安堵の色のようなものが漂いだしている。
「第八艦隊との合流が近いのか?」
 カガリはそう呟く。
「だとすると、いろいろとまずいかもしれないな」
 自分達はもちろんラクスはどのような扱いを受けるかわからない。
 何よりも、今のままではいつまで経ってもキラに会えないではないか。それは自分が耐えられない。カガリはそう心の中で呟く。
「第一、私のせいであいつが危険な目に遭うのは不本意だからな」
 とはいうものの、どうすればいいのだろう。
「この艦を乗っ取ってしまえば一番簡単なんだけど」
 そのままミナに連絡を取って迎えに来てもらえばいい。そうすれば、ムウの問題も片がつくのではないか。
「問題は、私一人では難しい、と言うことか」
 いくら自分が訓練を受けてきても軍人ではない。一人二人ならばともかく、艦を丸ごと制圧するのは難しいのではないか。
「なら、お手伝いしましょうか?」
 背後からラクスの声が響いてくる。
「……ラクス?」
 何を言っているのか、と思う。
「お前、戦闘訓練を受けていないだろう?」
 無謀な、と思わずにいられない。
「大丈夫ですわ。ピンクちゃんがいますもの」
 それに、とかのじょは微笑む。
「この艦のシステムを乗っ取ってしまえばいいのではありませんか? 特に、生命維持関係を」
 そのくらいなら自分でもできる。彼女はさらにそう言ってくれた。
「……カナードさんに断ってからな」
 いざとなったら、彼に止めてもらおう。そう思いながらカガリは言葉を口にした。

 しかし、ラクスが実はザフトの歴戦の勇者よりも怖い存在だと、カガリはすぐに思い知らされた。


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最遊釈厄伝