空の彼方の虹

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「すまぬが、出かける用事ができた。お前はレイのそばにおれ」
 よいな? とギナはキラへと告げる。
「お出かけ、ですか?」
 はっきりとはわからないが、何かを察したのだろう。キラが不安そうな表情を作る。
「大使館へと行ってくるだけよ。ウズミから連絡が入っているらしいからの」
 確認しに行かなければいけない。言外にそう告げた。
「何。それが終われば、すぐに戻ってくる。だから、安心してよいぞ」
 暴れたりはせぬ、と付け加える。そうすれば、キラは少し困ったような表情を浮かべた。
「別に、そう考えていたわけではないのですけど……」
 そのまま、彼は困ったように付け加える。
「ただ、ここはオーブではないので、何があるかわからないですから」
 ギナならばどのような状況でも乗り越えられるとわかっている。それでも、自分が不安だから、とキラは告げた。
「プラントも私に手を出すほど馬鹿ではあるまい。ミナを敵に回すとどうなるか。身にしみているはずだからな」
 ギナはそういうと、キラの頬をつつく。柔らかな感触が心地よくて、ついついつまみたくなる。そう考えていたときにはもう、実行に移していた。
「だから、大丈夫だ。安心していろ」
 最後の仕上げとばかりに、少しだけ指に力を込める。
「痛いです、ギナ様」
 困ったようにキラがそう口にした。
「わざとだからの」
 自分でも歪んでいいるとはわかっている。それでも、キラのこんな反応を見るのは楽しいのだ。
「ギナ様」
 ひどいです、とキラは告げる。
「好きな相手をたまにいじめたくなるのはどうしてか」
 そんな彼に、ギナはそう告げながら手を放す。
「後でミナにでも聞いておこう」
 今度は彼の頬をなでる。
「……ミナ様に泣きついてもいいですか?」
 そうすれば、キラがこう言ってきた。
「かまわんよ」
 ミナも笑って終わらせるような気がする。そう心の中で呟いていた。

 気がつけば、目の前にラクスの姿はない。
「全く、あいつは……」
 どこに行ったのか。そう呟きながら、カガリは手にしていたお盆をテーブルの上に置く。
「せっかくの飯が冷めるだろうが」
 どうせなら、暖かいうちに食べた方がまだ旨いと思う。それなのに、とため息をつく。
「鍵がかけられていようとどうしようと、あいつには関係ないしな」
 彼女が連れて歩いているペットロボット。あれが勝手にロックを解除して歩くのだ。
 それに関してはどうでもいい。
 問題なのは、あれの制作者だ。
「全く……あの馬鹿が作るものにはろくなもんがないな」
 性格が悪いからか? とカガリは続ける。
「とりあえず、探してくるか」
 言葉とともに体の向きを変えた。その彼女の目の前でいきなりドアが開く。
「あら、カガリ。戻っていましたの?」
 開口一番、口にするのはそのセリフか! と思わずにいられない。
「ラクス、お前な……」
「カナード様とお話しをして来ましたの。なかなか、こちらに戻っていらっしゃいませんから」
 確かに、最近、カナードは何か裏工作をしているのか、部屋に戻ってくることは少ない。
「だからといって、お前が出歩くと目立つだろうが」
 そのせいでカナードに迷惑がかかったらどうするのか。言外にそう告げる。
「大丈夫でしたわ。ピンクちゃんは賢いですから。監視カメラの場所もしっかりと把握しておりますわ」
 今までも無駄に出歩いていたわけではない。彼女はそう言って笑う。
「やっぱり、アスランの作るものはろくでもないものばかりだな」
 カガリはそう言って深いため息をついた。


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最遊釈厄伝