空の彼方の虹

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 しかし、本当に彼が来るとは思っていなかった。それがキラの偽らざる本音だ。
「……あの……ギナ様?」
 どうやってここに、とキラが問いかけたのは、ギルバートから何の連絡もないからである。間違いなく、彼は正規の方法をとっていないのだろう。
「気にするな。手続きなら、今、とっているだけよ」
 すぐ終わる。そう言われて納得できるだろうか。
「なら、終わってから来てもよかったじゃないですか」
 その方が周囲に迷惑をかけないのに、とキラは言外に告げる。
「あの男なら、そのくらい、どうとでもするであろうよ」
 そのくらいできないならキラを預けておけない。ギナは平然と言い切った。
「……ギナ様……」
 間違いなく、ミナは厄介払いをしたんだ。キラは心の中でそう呟く。
「安心しろ。私はおとなしく手続きを受けていることになっている」
 つまり、誰か身代わりを立てているのか――あるいは、データーをごまかしているのかもしれない。どちらにしろ、ばれたら、いろいろと厄介なのではないか。
「……ミナ様……」
 いったい、どうしてこう厄介事を押しつけてくれるのか。そう考えずにいられない。
「キラさん」
 実は、キラ以上にレイの方がパニックを起こしていたようだ。
「とりあえず、お茶にしようか」
 落ち着こう、とキラは苦笑とともに彼に告げる。
「そうですね。ともかく、ギルにも連絡を」
「お願い」
 こうなれば、自分も誰かに丸投げをしたい気持ちだ。しかし、そうすれば、ただでさえ忙しいギルバートが倒れるかもしれない。
 それでも、思わずため息が出る。
「どうした? 何か困ったことでもあるのか?」
 自分が原因だと考えていないのだろうか。ギナがこう問いかけてきた。
「ギナ様」
 こうなったら、自分が何とかするしかない。そう判断をして、キラは口を開く。
「ここはオーブではないとわかっていらっしゃいますよね?」
 まずはここからだろうか。しかし、何故、自分がギナに説明をしなければいけないのか、と思わずにいられない。
 それでも、ここで彼に意見できる人間は自分だけだ、だから、とキラは意を決して口を開いた。

 伝えられた報告に、ラウは小さなため息をつく。
「アスランを呼び出せ」
 不本意だが、彼を同席させないわけにはいかない。
 それに、とすぐに心の中で付け加える。一番の問題はここから話した、だから、大丈夫ではないか。
 もちろん、気を抜くわけにはいかない。
 本当に厄介なことになった。そう思わずにいられない。
 今、自分達が追いかけている相手は、決して手を抜いてはいけない相手だ。そんなところを見せれば、間違いなくこちらもやられる。
 かといって、こちらも無視するわけにはいかない。
「さて……どちらを優先するか」
 いっそのこと、今連絡が来たことはアスランに丸投げしてしまおうかとすら考えてしまう。
 しかし、アスランが暴走する可能性を考えれば、それも難しい。
「誰かに貧乏くじを引かせるしかないかな?」
 いったい、誰が適任か。
 そう考えると同時に、該当者が二人浮かんできた。
「ふむ……いっそ、あの二人セットでアスランを押しつけるか」
 それが一番手っ取り早いような気がする。
「では、そうしよう」
 小さくうなずく。
「ミゲルとニコルも大至急呼び出してくれるかね?」
 三人セットで説明をできれば一番手間が省ける。その分、あちらの捜索の指揮を執りやすい。
 ラウはそう考えていた。

 その頃、アークエンジェルでそれに関わる騒動が起きているなど、そのときのラウには想像もつかないことだった。


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最遊釈厄伝