空の彼方の虹

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 ギナの姿を見て、ミナは小さな笑みを浮かべた。
「ずいぶんとご機嫌のようだな、ギナ」
 その表情のまま問いかける。
「とりあえず、しっぽをつかんだからな」
 憮然とした表情で彼は言葉を返してきた。
「おかげで、カナードとカガリを見失った」
 彼は吐き捨てるように付け加える。
「カガリも?」
 それは予想外のことだ。だが、あのじゃじゃ馬であれば十分にあり得るだろう。
「カナードがそばにおるのであれば、大丈夫であろう」
「ムウも合流している。もっとも、まだ籍はあちらにあるようだが、フォローはしているだろう」
 それでも、居場所が特定できないのは怖い。彼はそう続ける。
「あれのそばにキラがおらん。目を離すと何をしでかすかわからんからな」
 ミナから見れば、ギナも似たり寄ったりだ。
「大丈夫であろう。あれもカガリを可愛がっておる。十分、枷にはなるだろう」
 彼はそう付け加える。
「そうか」
 確かに、カガリがいればまだカナードの爆発は抑えられる。ムウがそばにいればなおさらだ。
 そうなると、心配なのは目の前の存在、と言うことになる。
「ギナ」
 ものすごく不安だが、仕方がないか。そう心の中で付け加えながらミナは口を開く。
「プラントに行ってきてくれないか?」
 その瞬間、彼は思いきりいやそうな表情を作る。
「理由は?」
「キラがあちらにいる。そばにいてフォローをして欲しいのだが……いやなら、他の者に頼もう」
 しかし、それがすぐに変化した。
「あの子がいるなら行くに決まっているだろう」
 何を言っている、と彼は続ける。その豹変ぶりに自然と笑みが深まる。
「では、頼もう。最悪の場合、力尽くであの子を連れ帰ってきてもかまわない」
 だが、とミナは続けた。
「それは最後の手段だ。できるだけ穏便な方法を使え。いいな?」
 一応、釘を刺しておく。だが、それが意味を持つのかどうか、彼女にもわからなかった。

 いったい、自分が何を間違えたというのだろうか。
「あれは、間違いなく《キラ》なのに」
 誰もが違うという。
 確かに、あの頃のままの姿で自分の目の前に現れたのは今考えればおかしいと言えるかもしれない。だが、昔から、キラは年よりも幼く見えた。
 それが少し行き過ぎただけだと思ったのだ。
 第一、自分はキラにカガリ以外の親戚がいると聞いたことはない。
 だから、あんなにそっくりな人間が、この世界にもう一人いるなんて考えたこともなかったのだ。
「だが……確かに、キラなら、あんなにおびえないか」
 初めて会ったときの彼の様子を思い出して、そう呟く。
「でも、何故、あんなにおびえられたんだ?」
 それならば、と思う。
「カガリが、何か余計な事を吹き込んだのか?」
 その可能性はある。だから、あんなに自分のことを怖がったのか。
「……なら、本当の《キラ》はどこに行ったんだ……」
 誰もが『死んだ』という。
 しかし、そんなことをすぐに受け入れられるはずがない。
「誰かに確かめるしかないか」
 だが、誰に確かめればいいのだろう。
 一番確実なのは、カガリだ。だが、彼女は、不本意ながら今、自分の手の届かない場所にいる。
 そうなると、もう一人の《キラ》しかいない、と言うことになるのではないか。
「どうすれば、話しができるかな」
 彼と、と呟く。自分が仮に『謝りたい』と言ったとしても、他の者達は《キラ》と会わせてくれないだろう。
「結局、やることは同じか」
 相手が誰であろうと、とため息をつく。
「それならば、それでかまわないか」
 そう呟いた。


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最遊釈厄伝