空の彼方の虹

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 ここにいるのは知っている人たちばかりだ。何よりもアスランがいない。
 それなのに、何故、落ち着かないのだろう。
 こんなことを考えていたせいか。無意識にため息がこぼれ落ちる。
「キラ? どうしました」
 それに気づいたのだろう。レイが即座に問いかけてくる。
「まだ、ここになれてないからかな。何か落ち着かないって、そう思っただけ」
 危険も何もないとわかっているのに、とキラは続けた。
「……ここにはラウもカナードさんもいないから、でしょうか」
 レイはそう言って首をかしげる。
「俺では、あの人達のようにキラを守れませんし……まだ」
 そういうあたりが彼らしいな、とキラは思う。今は無理でも、いつかは二人に追いついてみせる、とレイは言っているのだ。
「でも、レイがそばにいてくれると嬉しいよ」
 一人でいるともっと落ち込みそうだから、とこっそりと付け加える。
「……でも、何か不安なんだよね」
 何かがわからないから余計に不安なのだ。キラはそう続けた。
「兄さんは無理でも、サハクのお二人と連絡が取れればいいんだけど」
 そうすれば、今、みんながどうしているのか、情報をもらえるはずだ。
「ギルが帰ってきたら相談してみましょう」
 彼であればいい裏技を知っているかもしれない。レイはそう言って笑う。
「そうだね。ギルさんなら、何か解決方法を知っているかもしれない」
 もし、彼も知らなかったとしても、相談をすれば解決方法を一緒に探してくれるはずだ。それだけでも気が楽になるのではないか。
「でも、ギルさん、今日帰ってくるの?」
 ラウと違ってプラント国外に出かけることは少ない。だが、同じくらい忙しいのではないか。泊まり込んで帰って来ないこともよくあるし、とキラは問いかける。
「たぶん。出かけるときにそう言っていたので」
 いつの間に、と思う。
「なら、いいけど……ご迷惑じゃないかな」
 疲れているのではないか。それなのに、さらに厄介事を押しつけてしまってもいいのだろうか。
「ラウの言葉ならともかく、キラのことなら喜んで手を貸してくれると思いますよ?」
 レイはそう言って微笑む。
「第一、キラがここに来て一番喜んだのはギルですし」
 キラのために温室まで作っていた。レイはそう押してくれる。
「温室って、ここ?」
「そうです。まぁ、以前から計画はしていたようですけど」
 それにしても、と思わずにいられない。
「キラとのんびりしたい、と言うのが理由ですから」
 こういうときだけ行動が早い、とレイは苦笑を浮かべる。
「でも、ここ、居心地がいいですからね」
 自分もついつい、ここに居座ってしまう。レイはそう付け加えた。
「だから、自分のせいだと思わないでくださいね」
 自分もここが気に入っているのだから、とレイは続ける。しかし、それをどこまで鵜呑みにしていいものかがわからない。
「キラ?」
 そう考えていれば、レイがため息をつきながら眉間をつついてくる。
「しわが寄っていますよ」
「別に……」
 どうでもいいことではないか、と表情で告げた。
「跡が残ったら、カナードさんが悲しみますよ?」
 だが、こう言われては表情を和らげるしかない。
「とりあえず、オーブに連絡を取れるように、ですね。いざとなれば僕のアドレスを貸しますけど」
 話題を変えるように、レイはそう言った。
「なら、ラウの隊の人たちに連絡を取りたいな」
 オーブならあれこれ言われるかもしれない。だが、ニコル達ならばいいのではないか。そう考えて言葉を口にする。
「それなら、すぐにでもアドレスを用意しますよ」
 待っていてください。そういうとレイは腰を浮かせる。
「うん」
 それだけでも、気を紛らわせることはできる。
「みんな、元気でいてくれるといいな」
 キラはそう呟いていた。


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最遊釈厄伝