空の彼方の虹

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 とりあえず、ザフトの追尾は振り切ったらしい。
 しかし、問題はこれからだ。
「……何故、ヘリオポリスが……」
 そう考えているカナードの脇で、カガリはまだ衝撃から抜け出せないでいる。
「セイランだろうな」
 ため息とともにカナードは言葉を口にする。
「セイラン?」
 何故、と彼女の声音が問いかけていた。
「都合が悪いことを隠すためだろう」
 壊してしまえば、見つからない。その上、責任をザフトに押しつけることができる。それで世論をあおることができれば、一石二鳥ではないか。
「あいつらの考えそうなことだ」
 民間人のことはどうでもいいとしか考えていない。
 自分達の利益が最優先なのだろう。
「ギナ様がいたはずだからな。証拠のひとつやふたつ、つかんでいると思うが」
 問題は、どうやって連絡を取るか、だろう。
「システムの一部を乗っ取るか」
 通信に関する部分だけでも、とカナードは呟く。
「できるのか?」
 カガリがそう問いかけてくる。
「俺をなんだと思っているんだ、お前は」
 あきれたようにカナードは言い返す。
「このくらいは何とでもできる」
 キラほどスムーズにはできないかもしれないが、と心の中だけで付け加えた。
「それに、うまくいけばキラとも連絡が取れるかもしれないぞ」
 カナードはそう言って笑う。
「キラと?」
「あぁ。そうだ」
 ラウのことだ。キラにはそれなりの自由を与えているはず。あるいは、すでにあの艦から退避させているかもしれない。
 そうなれば、彼のことだ。すぐに自分に連絡を取ろうとするはずだ。
「なら、すぐにでもやってもらわないと……私に手伝えることは?」
「しばらく黙っていろ」
 集中するから、話しかけられても困る。即座にそう言い返した。
「……わかった」
 この切り返しは予想していなかったのだろう。彼女はすねているとわかる口調で言い返してきた。
 だが、それを気にしている暇はない。いつ、誰が顔を出すかわからないのだ。
 ロックできればいいのだが、と心の中で呟く。そうすると、いらぬ憶測を生みそうなのでやめておく。
 自分はかまわないが、カガリは女性だから、後々困るだろう。
 いや、自分もキラに知られたらなだめるのが大変かもしれない。あの子供は自己評価が低いのだ。カガリが相手でも身を引くと言い出しかねない。
 そのときの様子が簡単に想像がついて、頭痛がしてくる。
 こんなことを考えながら、モバイルのケーブルを次々とつないでいく。
「キラの作ったプログラムを持ってきておいて正解だったな」
 使う状況になるとは思わなかったが、と思いながらそれを起動させる。そのままプログラムを走らせた。
「これでかなり時間が短縮できるはず」
 航法システムを乗っ取るわけではない。だから、手間取ることはないだろう。そう考えながらさらにキーボードを叩く。
「よし」
 予想通りというのか。すぐにシステムに潜り込むことができた。しかも、気づかれていないらしい。
 人手不足の付けがこんなところまで出ているのだろうか。システム自体、穴が多い。しかし、これならば予想よりも早く終わるかもしれない。
 こう呟きながら、作業を進めていく。
 自分達のアドレスを正規のものと認識させつつ、記録が残らないようにプログラムを付け加える。
 作業自体はさほど時間がかからずに終わった。
「……さて、テストをしてみるか」
 とりあえず、と呟きながら短い文章を打ち込む。送信相手は、もちろんキラだ。
 そのまま、送信をする。
「うまくいけばいいが」
 送信終了を確認して、こう呟く。
「終わったのか?」
 その言葉を耳にしたのだろう。カガリが問いかけてくる。
「とりあえずはな」
 ばれているかどうかはすぐにわかるだろう。そのときのことはそのときだ。モバイルの電源を落としながらそんなことを考えていた。


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最遊釈厄伝