空の彼方の虹

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「だから、俺が出撃しなければいけない理由を、オーブの法律でも齟齬はないように説明しろ。そう言っている」
 地球軍の理屈ではなく、とカナードは彼らをにらみつけながら言った。
「ザフトが追いかけてくるからだ」
 こう言ったのは、ムウだ。人目がある以上、彼もそう言うしかないのだろう。
「……それが何か?」
 自分達には関係ない。カナードはそう告げる。
「俺はお前らの嫌いなコーディネイターだし、こいつは確かにナチュラルだがオーブの人間だ。そう考えれば、あちらもきちんと保護してくれるだろう」
 つまり、自分が戦場に立たなければいけない理由はない。そう続けた。
「勝手な!」
 ムウの斜め後ろにいた黒髪の女性士官が顔をしかめながらそう言ってくる。
「俺はオーブの人間だからな。その理念に従っているだけだ」
 それに、とカナードは目をすがめた。
「俺に同胞殺しをしろと?」
 これを潜めるとそう問いかける。
「その結果、俺に、オーブを追放されろ、と言うことか」
 お前たちの勝手な言い分で、と彼は続けた。
「別に、そう言っているわけでは……」
 ムウの隣にいた茶色の髪の女性士官が慌てたように口を開く。
「俺に『戦え』と言っている時点で同じことだ」
 専守防衛。それがオーブの理念でもある。もっとも、傭兵もしている自分が言えることではない。だが、ムウ以外にその事実を知っているものもいないのだ。だからかまわないだろう。
「第一、貴様らは、今、自分達が言ったことを全世界に公表できるのか?」
 この言葉に、ムウ以外の二人は視線をそらす。結局、それが答えなのだ。
 カナードはあきれたような視線を彼らに向ける。
「悪いが、俺は貴様らとなれ合うつもりはない。自分の尻は自分で拭け!」
 この言葉とともに完全に視線をそらす。
「貴様!」
「そこまでだ、バジルール少尉!」
 怒鳴りつけようと口を開いた彼女をムウが止める。
「無理を強いているのはこちらだ。説得できないからと言って、実力行使に出るな」
 厳しい声でムウがそう告げた。
「地球軍の士官というのは、自分の意見が全世界に通用すると思っているのか?」
 カガリが見下すような口調でそう言う。
「オーブの人間ですら、自分達の好きにできると? セイラン関係者ならともかく、他の人間もそうだと思うな」
 さらに彼女は言葉を投げつけた。
「……言わせておけば……」
「だから、落ち着け。お子様の挑発に乗ってどうするんだよ」
 ため息とともににムウがバジルールを止める。
「お嬢ちゃんも、頼むからあまりこちらをあおらないでくれるか?」
 さらに彼はカガリへと視線を向けた。
「先にけんかを売ってきたのはそちらだろう?」
 違うのか? と彼女は言い返す。
「だから、落ち着いてくれって」
 ムウがそう言ってため息をつく。
「俺たちは何が何でも残ったストライクを持ち帰らなければいけない」
 とりあえず、とムウは言う。
「勝手に持っていけばいいだろう」
 カナードはあくまでも『自分達には関係ない』という態度を崩さない。
 奪われた四機と戦ってみたい気持ちがないわけではない。同じくらい、ストライクの存在は惜しい。
 だが、それ以上にカガリの安全の方が重要なのだ。
「ただ、俺たちを巻き込むな。そう言っているだけだ」
 とはいうものの、ムウのことも気にかかる。
 落としどころをどこにするか。とりあえず、それを探ることにした。


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