空の彼方の虹

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  07  



 ハッチが開くと同時にラスティが真っ先に外に出た。その後にニコルとともにキラも続く。
「こっちだ」
 そうすれば、緑の軍服を身にまとっている人物が手招きをしているのがわかった。
「ミゲル?」
 どうして、とニコルが呟く。
「隊長の指示だよ」
 ミゲルはそう言って笑う。そのまま、彼はキラに視線を向けてきた。
「その子が?」
 そして、こう問いかけてくる。
「そう。この子が《キラ》な」
 かわいいだろう、とラスティが笑う。
「アスランに迷惑をかけられている子ですよ」
 全く、とニコルはニコルであきれたような表情で付け加えた。
「おかげで、すっかり怖がっています」
 アスランを、と続ける彼の言葉に、ミゲルは一瞬『信じられない』という表情を作った。
「マジ?」
「残念ながら、な」
 ため息とともにラスティもうなずく。
 次の瞬間、ミゲルが『しまった』という表情を作った。
「ミゲル?」
 ニコルの声に少しだけ剣呑なものが含まれる。
「用事があると言うから、こちらに来ることを許可したばかりだ……」
 すまん、とミゲルはすぐに続けた。
「ともかく、隊長のところに行こう。あそこなら、アスランだってうかつに足を踏み入れられないからな」
 彼はそう言う。
「それしかないでしょうね」
 そこまで早く、アスランが動くとは思わなかった。ニコルはそう言うとため息をつく。
「と言うことで、アスランに関しては、ミゲルに何とかしてもらうしかないよな」
 任せた、とラスティは明るい口調で告げる。
「こいつは俺たちの中で一番実力があるからな。アスランでもうかつに逆らえない。だから、安心していいぞ」
 ラスティはさらにそう付け加えた。
「……はい」
 そのくらいであきらめてくれるのだろうか。そう思いながらも、キラはうなずいてみせる。
「と言うことで、さっさと移動しましょう」
 ミゲルが許可を出した以上、アスランがそれを盾に押しかけてくるはずだ。だから、その前にこちらも安全圏に逃げ込むに限る。ニコルはそう主張した。
「そうだな……先に行っていろ」
 ミゲルもそう言ってうなずく。
「チーフに頼んだら、俺もすぐに追いかける」
 さらに彼は言葉を重ねる。
「お前たちを隊長のところに連れて行くまでが俺の役目だからな」
 アスランのことはその後だ、と言うミゲルに、他の二人は「仕方がないですね」とうなずく。
「悪かったな。最初から知っていたら、許可は出さなかったんだが」
 言葉とともにミゲルはキラの髪をなでる。
「どちらにしろ、ニコルが一緒なら大丈夫だ、と思うんだがな」
 それでも、と彼は言う。
「いえ……僕も、どうしてこんな状況になっているのか、わからないので……」
 だから、余計に怖いのだ。キラはそう言った。
「任せておけって」
 ラスティがそう言って笑う。
「拾った以上、最後まで責任を持つのは当然のことだからな」
 しかし、その言葉は違うような気がする。
「ラスティ……言いたいことはわかりますが、ちゃんと言葉を選んでくださいね」
 それをしてしようかどうしようか。悩んでいれば、代わりにニコルがこう言ってくれる。
「何か間違ったか?」
「……あなたは」
 あきれたようにニコルは言い返す。それでも、彼はキラの手をしっかりと握ると移動を開始した。
「拾ったのはお前じゃないだろ?」
 言葉とともにミゲルが思いきり、ラスティの背中を叩く。
「……ぐぇっ……」
 周囲に間の抜けた声が響き渡った。

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最遊釈厄伝