空の彼方の虹

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  05  



 宇宙港に目的の船が入ってくる気配はない。
 それどころか、職員の間に動揺のようなものが広がっているのがわかった。
「……何かあったな」
 眉根を寄せると彼はそう呟く。
「だからといって、あいつがそう簡単に死ぬはずがない」
 自分が死ねばどうなるか。それを一番よく知っているのはあいつだから。そう付け加えた。
「ともかく、正しい情報だな」
 それさえ手に入れられれば、いくらでも対処のとりようがある。
「そういう情報が集まるとすれば、ギルドか……」
 あるいは、船を出したサハクか。
 どちらにしろ、動かなければ意味がない。
「大丈夫。すぐに迎えに行ってやるさ」
 だから、無謀な行動はとるなよ……と口の中だけで告げると、きびすを返す。そのまま、周囲でざわめいている者達の中へと紛れていった。

 あれは《キラ》だ。
 それも、自分が知っている……とアスランはニコルとともにいる彼の姿を見ながら心の中で呟く。
「何故、あそこまでおびえられなければいけない?」
 あの頃は、あんなに一緒にいたのに……と眉根を寄せる。
 それとも、この三年間に、何かが変わったというのか。
「あいつは、あの頃のままなのに……」
 自分だって、変わっていないはずだ。そう付け加える彼は、自分の言葉の矛盾に気づいていない。
「ともかく、話をしなければ始まらないな」
 何が原因なのか。それがわからなければ解決のしようがないだろう。
 しかし、だ。
 どうしたことか、ニコル達がそれを邪魔してくれている。
 彼らにしても、自分の言葉を聞いてくれればいいものを、最初から聞く耳を持っていないのだ。
「……一番の難関は、やはりニコルか?」
 柔らかな外見とは裏腹に、裏工作が得意なのだ、彼は。その彼を出し抜くのはかなり難しい。
 それでも、とアスランは続ける。
「話をしないと、いけないんだ」
 お前と、と付け加えられた言葉を耳にしたのは、アスランだけだった。

 目の前のモニターに表示された内容に目を通して、ラウは小さな笑みを浮かべる。
「これはこれは……不幸中の幸い、と言うべきなのかな?」
 彼にとっても自分達もとっても、と彼は呟く。
「もっとも、この隊にはアスランがいる以上、そうとは言いきれないが」
 それでも、と彼は続ける。
「私がフォローできるからよしとしよう」
 それでも、少しでも早くあちらに返さなければいけないだろう。そうでなければ、もう一人がどのような行動に出てくれるかわからない。
「あの子も、困ったものだね」
 それがなければ、もう少し選択肢が増えたのではないか。
 しかし、今更それを言っても仕方がない。彼らをそうさせた責任の一端は自分達にもあるのだ。
 何よりも、彼ら本人がそれでいいと思っている以上、そばにいられない自分が口を挟むことではないのではないか。そう考えている。
「ともかく、あの子の精神状態を最優先に考えないとね」
 アスランがいる以上、と続けた。
「さて……あの子達が来る前に仕事を終わらせてしまおうか」
 時間は有効に使わないといけないだろう。そう続けると、モニターの画面を切り替える。
「ザフト的には、こちらの方が優先だろうね」
 そこに映し出されていたのは、明らかに隠し撮りだとわかる粗い画像だった。しかし、それでもはっきりと、そこにあってはならないものを確認できる。
「全く……困ったものだね」
 これをどうするべきか。いや、自分にどうさせたいのか。それも判断に悩むところではある。
「まぁ、キラのことがある以上、連絡を取らないわけにはいかないね」
 それが自分に有利に働いてくれればいいのだが。そう考えて、ラウはすぐに自嘲の笑みを浮かべる。
「だめだね。あの子の前では、私がこんなことを考えているとは気づかれないようにしないと」
 嫌われてしまうね、と続けた。それでは悲しい。そう考えると、今度こそ意識を切り替えた。

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最遊釈厄伝