仮面

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  02  


 アークエンジェルから送られてきたデーターを元に、二人の機体は戦場へと飛び込んでいった。
「……やっぱり……戦うはめになってしまったね。アスラン……」
 自分に向かってくる赤い機体を見つめながらキラが小さく呟く。
 その言葉の裏にあきらめが見え隠れしているのは気のせいではないであろう。
 アークエンジェルは守らなければならない。
 でも、もう戦い無くない。
 二つの感情がキラの中で渦巻いている。そのバランスがいつ崩れるか、キラ自身わかっていない。ただ、それは遠い日ではないであろうと言う予感めいたものがあった。
 その時がくれば、間違いなく自分だけではなく友人達の命も消えるだろう。
「君を裏切ったんだもの……少しでも長くみんなを……」
 守らないと……と呟くと、キラはストライクをまっすぐにイージスへと近づけていく。
 他の三機を相手にする方が少しだけとは言え気が楽なのはわかっていた。だが、どうしてかキラの意識はイージス--------アスランへと向いてしまう。その心理を分析するものがいれば、それはどうせ死ぬなら彼の手にかかって……というキラの無意識の願望を見つけ出したのではないだろうか。
 もちろん、キラにはその自覚はない。
 いや、それに気づいている暇がないと言うべきか。
 実際、イージスに辿り着くよりも早くデュエルがストライクに襲いかかってきた。
「っく」
 その攻撃を、キラは辛うじて避けた。だが、そのために注意がおろそかになっていたのだろう。すぐ側まで来ていたプリッツに気がつかなかったのだ。
 脇から突進してきたブリッツの攻撃でストライクはエールユニットの一部を損傷してしまう。
「……このままでは……」
 ただのなぶり殺しだ……とキラは小さく呟く。同時に、彼の指はシステムを呼び出していた。損傷箇所を確かめると、即座にその回路を切り捨てる。他の回路を代わりにして、戦闘に支障がないようにするまでに、ほぼ1分ほどしかかからなかった。
「問題は、この状態でどれだけ持つか……だけどね」
 機動性を確保したためにバッテリーの消費量が微妙に増えてしまった。それだけ厳しい状況に追い込まれていると言っていい。
「フラガ大尉の援護は……期待できないな」
 周囲の様子を映し出しているモニターには、彼がシグーとバスター二機を相手にしている様子が映し出されている。
 そんな彼に自分を援護する余裕などないだろう。
 こう言ってはなんなのだが、彼のゼロはガンダム相手では性能的にきついはず。キラも手伝ってOSのカスタマイズはしたが、それでも埋めがたい差が残っている。
 それでもシグーとバスターを引き受けてもらえるだけマシだ……とキラは心の中で呟いた。
 確かに三機の相手は辛い。
 一瞬とも気を抜けないのは事実だ。
 だが、あと二機攻撃に加わられたら、間違いなくとっくに落とされているだろう。
「ともかく、アークエンジェルに彼らを近づけないようにしないと……」
 そのためにはどうすればいいだろうか。
 デュエルのサーベルをストライクのそれで受け止めながらキラは本気で考えた。
 一番いいのは、怪我をさせない程度の損傷を与えて相手の動きを止めることだろう。
 しかし、それができないこともわかっている。
 そんなことができる余裕があれば、とっくの昔にアークエンジェルを安全なところまで連れて行けるだろう。
「……僕が弱いから……」
 もっと力があったら、誰も傷つけずにすむのだろうか。
 そうすれば、みんなを守ることができるだろうか。
 心の中でそう呟いた言葉を引き金にしたかのように、キラの意識はどこからともなく湧き上がってきた何かに押しつぶされてしまった。

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最遊釈厄伝