仮面

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  14.5  


 キラを守るために、自分は何ができるだろう。
 キラを支えるために、どうすればいいのだろう。
 その気持ちがアスランの中で別の感情に変化していったのはいつからだったのだろう。本人ですら気がつかなかったそれをはっきりと指摘できる者はいない。
 だが、キラの中にあるためらいを感じた瞬間、それはアスランの感情を支配してしまった。
 キラを独占したい。
 例え、どんな卑怯な手を使ったとしても……
「もっと側に行っていい?」
 すべての感情を自分に向けて欲しい。こうして、二人だけでいるときには。そんな自分の感情を隠しつつ、アスランは優しい口調でキラに問いかけた。
「……もっとって……これ以上、無理だよ?」
 アスランの言葉の意味がわからないのだろう。キラはきょとんとした表情を浮かべている。
「じゃなくて、キラの心に」
 その表情にほんの少しだけアスランは心が痛んだ。だが、それ以上に彼を独占したいという感情の方が強い。
「アスラン?」
「そうしたら、君が僕を選んでも、誰からも非難されないよ?」
 キラが悩んでいるのは、おそらくこのことだろう。
 自分だけ安全なところにいたくない。
 こうして、守られているわけにはいかない。
 だけれども、アスランの側からも離れたくない。
 そんなキラの心理がわかるから、アスランは彼の心を手に入れるためにこんな誘惑の言葉を口にする。
「……僕が、アスランだけを選んでも?」
 アスランの予想通り、キラの言葉の中にほんのわずかだが願望が透けて見えた。
「きっとね。どうする?」
 もっとも、いやだと言われてももうやめられないだろうけど、とアスランは心の中で付け加える。
 自分の顔を見上げてくるキラの瞳が葛藤で揺れていた。
「大好きだよ、キラ」
 そんなキラの気持ちを後押しするように、アスランは囁く。
 次の瞬間、キラが小さく頷いた。
 アスランはもう自分が押さえられなかった。キラの唇に自分のそれを押し当てると、軽く吸い上げる。驚きなのか、それとも拒絶の言葉を口にしようとしたのか……キラの唇がうっすらと開かれた。それをいいことに、舌を滑り込ませる。
「んっ」
 キラののどから甘い声が漏れた。それをもっと聞きたいと思いながら、そうっと服の下へと指を滑り込ませていく。同時に、軽く体重をかけて彼の体をシーツの上へと押し倒した。
 そのまま、彼が身にまとっている服の下へと手を滑り込ませる。
 呼吸のしかたを知らないのか。息苦しくなったらしいキラが、アスランの背を叩く。
「どうしたの、キラ」
 唇を離すと、笑いを含んだ声でアスランは問いかける。そんな彼に、キラは答えを返すことができない。呼吸を整えるだけで精一杯のようだ。
「……ここは何のために付いているわけ?」
 くすりっと笑いを漏らすと、アスランはキラの鼻の上にキスを落とす。
「……何で……」
 キラの唇から、吐息と共に声がこぼれ落ちた。
「何?」
 もう、いやだと言われてもやめてあげられないよ……と言いながら、アスランは彼の服をたくし上げる。そして、あらわになった胸に唇を落とした。
「ぁっ!」
 少しきつく吸い上げれば、キラの白い肌に赤い痕が残る。それを何度か繰り返しているうちに、キラの肌がうっすらと染まっていった。
「な、んで……こんなに、慣れてるんだよ!」
 赤く染まった頬をさらに赤くしながら、キラが叫ぶ。それはアスランが予想していたのとはまったく違うセリフだった。拒まれているわけではないとわかって、アスランは笑みを深める。そして、彼の頬に唇を落としながら口を開いた。
「なんでって……軍にいると、自然とそう言う話も耳に入ってくるからだろう」
 もう黙って……というように、アスランは布の上からキラのそれを刺激し始める。
「……あぁっ!」
 キラの口から甘い声が飛び出す。それを耳にした瞬間、自分の体も熱くなっていくことにアスランは気がついた。
 刺激を加える手を止めないまま、アスランは身につけていた制服を脱ぎ捨てる。同時に、キラの肌の上からも彼の衣服を取り去っていった。
 直接肌を触れ合わせれば、キラが小さく吐息を付く。それがどういう意味を持っているのか、アスランにはわからなかった。だが、キラが自分を拒む様子を見せないからそのまま行為を続ける。
 かすかに存在を主張し始めた胸の飾りに舌を絡めれば、それだけでキラは大きくのけぞった。そっと彼の顔を盗み見れば、声を出すのを我慢しているのか、唇をかんでいるのが見える。
「唇、かみ切っちゃうよ」
 それから唇を離すことなくアスランが告げれば、不規則に触れる歯の感触がいやなのかキラは嫌々をするように首を横に振った。
「キラ?」
 手を伸ばして、アスランはキラの唇に指を触れる。
「舐めて」
 咬んでもいいから……と付け加えながらアスランはキラの唇を開かせた。そしてそのまま自分の指を彼の口に含ませる。
「ふぁっ……やっ!」
 閉じられなくなった唇から、キラの甘い声が飛び出す。熱い舌がそのたびにアスランの指に触れてくる。柔らかいそれの感触がアスランを煽る。
 反対側の飾りへと唇を移しながら、キラの口腔内を指で刺激した。同時にもう片方の手を体の線に沿って下げていく。そして、キラの中心で存在を主張し始めたそれへと指を絡めた。
「あぁぁぁぁぁぁっ!」
 キラの手が初めてアスランの体を自分の上からどけようというかのように彼の肩を押した。だが、アスランが手の中のものに柔らかく刺激を加えただけで、その指から力が抜ける。
「やっ! だめ」
 その代わりというのだろうか。キラの口から言葉が飛び出す。だが、どう聞いてもそれは否定と言うには甘すぎる。
「恥ずかしいの?」
 アスランの言葉に、キラは恨めしそうな視線を投げつけてきた。しかし、それが逆効果だとは思っていないだろう。
「もっと恥ずかしいことをして上げる。全部見てあげるから」
 我慢して、とアスランはいいながら体をずらしていく。
「アスラン!」
 キラが制止の言葉を口にした。だが、それにかまわずにアスランは手の中のものに口付ける。
「ひぁっ!」
 びくっとキラの腰が跳ね上がった。
 アスランの手の中のものもその刺激に体積を増していく。
 ためらうことなく、アスランはそれを唇の中に招き入れた。
「あっ、あぁ……んんっ……」
 舌を絡めて、さらにそれに刺激を加えていく。そのたびに、キラの体がびくびくと跳ね上がる。押しのけようとアスランの髪に差し込まれた指は既にすがりつくのが精一杯のようだ。
「やっ……やだぁ……」
 キラの声がアスランの劣情を煽っていく。
 早くその内へ入りたい。
 アスランの脳裏をその想いが支配し始める。だが、今のままではキラを傷つけてしまう。それだけはいやだ、とアスランの理性が叫んでいる。必死に自分を押しとどめながら、アスランはキラの後ろへと塗れた指を滑らせた。そして、慎重に滑り込ませていく。
「やぁぁぁぁぁっ!」
 キラの体が衝撃で硬直した。内に忍ばせたアスランの指も痛いくらいに締め付けられる。
「だめだよ、キラ! 力を抜いて」
 無駄だとは知りつつも、アスランはキラに声をかけた。同時に、彼の中心に再び舌を絡める。そして柔らかく刺激を加えればキラの意識は快感にすがりついていく。それがアスランには如実に伝わってきた。
 ゆっくりと内部を広げるように指をうごめかす。
 痛みと快感にキラの意識は翻弄され始める。
 そんなキラの体をアスランは慎重に拓いていく。そのおかげだろうか。いつしかキラは快感だけを追いかけ始めていた。
 アスランの方も、もう限界だった。
「キラ……いい子だから、そのまま力を抜いていて」
 指を引き抜きながら、アスランはそう囁く。そして、キラの体を抱え直すと、柔らかくなったそこへと自分の欲望を押し当てる。
「ひぁっ!」
 指とは比べ物にならない質量に、キラは呼吸をすることすらできないようだった。だが、既に自分を止められないアスランはそのまま彼の内へと身を沈めていく。
「……キラ……」
 そんな彼の背に、キラの爪が赤い線を刻んでいった……

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最遊釈厄伝