この手につかみたいもの
32.5
「……んっ……んぁっ……」
ベッドのシーツを咬んで、キラは必死に声を押し殺している。
「声、殺さなくてもいいのに」
くすりっと笑いを漏らすとアスランは口の中のモノにさらに強い刺激を加えた。
「ひぁっ!」
先端に歯をたてられて、キラは思わずシーツから口を離してしまう。その瞬間、キラの唇から甘い声がこぼれ落ちる。
「その声を聞けるのは、僕だけだろう?」
この言葉の裏には、自分以外に聞かせるのは許さないという声が潜んでいた。
自分に対する激しいばかりの執着。
それが怖い……とキラは思う。
「あっ、んんっ」
今は、まだアスランの中でバランスが取れているらしい。だが、そのバランスが崩れてしまえば、彼がどうなるか。自分の経験からキラにはわかりすぎるくらいわかってしまう。
「ひっ! だ、だめっ!」
指がゆっくりと侵入してくる。
無理矢理ならされた行為だとは言え、ここしばらく行われていなかったそれは、キラの体に負担を与えた。
「キラのここ、きつくなってるね」
いい子にしてたんだね、と付け加えながらアスランの指がゆっくりと内壁を探り出す。
「だ、めぇ……アスラン……人、来たら……」
こんな所を見られたくない、とキラは必死に訴える。
「大丈夫だとは思うけど……こんな可愛いキラを他人の目に触れさせるのはやっぱりまずいか」
他の奴がキラを欲しがったら困るものね……といいながら、アスランはキラの内に侵入させている指を増やした。
「っ!」
その衝撃に、キラは体内のそれをきつく締め上げてしまう。だが、すぐに力を抜こうと大きな深呼吸を繰り返す。
「ごめんね、キラ……やめてやりたいけど、僕の方も我慢できないんだ」
本国にいる間は触れられなかったから、といいながら、アスランが指を引き抜く。まだ完全にほぐされていない場所に、熱い感触が押し当てられる。
「やっ!」
これから襲うであろう痛みを予測してキラは体をこわばらせた。
「駄目だよ、キラ。力抜いてないと辛いのはキラの方だって知っているだろう?」
そう言いながら、アスランは指をキラの中心へと絡める。そのまま柔らかな指の動きで刺激を加えられれば、キラの意識は快感へと向けられてしまう。
快感を追いかけ始めたキラの体から一瞬力が抜けた。
「ひぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
その瞬間、アスランがキラの内へと侵入してくる。体を引き裂かれるような痛みに、キラは大きくのけぞりながら悲鳴を上げた。
「キラ、力を抜いて!」
アスランの方もきつく締め付けられて痛みを感じているらしい。眉間にしわを寄せながらこう口にする。だが、今のキラにその言葉は理解できない。小さく首を横に振るのが精一杯だ。
「……仕方がないな……」
このままでは埒があかないと判断したのだろう。アスランはすぐにでも動きたい自分を押し殺して、キラの体に刺激を加え出す。
慣れた手順で与えられた刺激に、キラは痛みから逃げ出すように快感へと意識を向けた。
感じれば感じるほど、アスランをくわえ込んでいる場所はさらに奧へと彼を導こうとする。
「……動くよ、キラ」
言葉とともにアスランはキラの唇にキスを落とした。そして、ゆっくりと腰をうごめかし始める。
「ひぁっ! んんっ……んぁっ……」
キラの唇から、途切れることなく声が飛び出す。
「君は、僕の、僕だけのものだよ、キラ……」
そんなキラの表情を覗き込みながら、アスランがうっそりと笑った。