この手につかみたいもの

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  19.5  



「やっ! やだっ!」
 キラは必死にアスランの手を止めようとする。だが、体勢のせいか、それとも鍛え方の違いか……どうしてもアスランの手を振り払うことが出来ない。それどころか、動けば動くほど、キラはアスランの都合のいい体勢へと導かれてしまう。
「本当に嫌? そんなに、僕に触られたくないの?」
 キラの顔を覗き込みながら、アスランが問いかけてくる。
「……アスラン……」
 それに何と答えればいいのか。
 本能的なものか、それとも何なのかわからない恐怖に襲われながらも、キラは何とか答えを探そうとする。
「嫌じゃないよね」
 そんなキラの沈黙をどう受け止めたのか。アスランは婉然と微笑む。同時に顔を寄せてるとキラの唇を自分のそれで塞いだ。
「んっ」
 当然のようにキラの口腔内にアスランの舌が滑り込んでくる。そのままきついくらいに刺激を加えられて、キラの体はなじみ始めた快感を思い出してしまう。
 フラガとは違うそれなのに、どうして体は勝手に熱くなってしまうのか。
 キラの体から力が抜けたのを確認して、アスランは唇を合わせたまま微笑む。そして、キラの体から服を脱がし始めた。
 服の隙間からキラの白い肌が覗く。そこにうっすらと残っている痕を見つけた瞬間、アスランはむっとした表情を作った。そして体を移動させると、そこをきつく吸い上げる。
「……だめっ!」
 ちくっとした痛みに、キラは我に返った。慌てて自分の上にいるアスランの体を押しのけようとする。しかし、その腕は力を持っていない。
「何が、キラ」
 あっさりとアスランはキラの腕をひとつかみにしてしまった。
「ぜんせん嫌がってないじゃない」
 君の体は……と微笑むと、アスランは片手で自分の軍服のベルトを外す。そして、それでキラの腕を縛り上げる。
「アスラン!」
「素直じゃないキラが悪いんだよ……でも、キラは昔からまじめだからね。望まなかったとしても、一度そう言う関係になっちゃったら他の人とは出来ないって思うのか」
 そう言うところも嫌いじゃないけどね……と言いながら、アスランは行為を再開する。
「でもね、それは最初から間違っていたんだよ。キラは、僕のものだろう?」
 昔からね……といいながら微笑むアスランの顔は誰もが見とれてしまうだろう。だが、キラにはそれをゆっくりと鑑賞している余裕はなかった。
「やめて!」
 すべての布を取り払われると同時に、アスランの指がキラのそこへと絡みついてくる。柔らかな刺激を加えられて、そこはあっさりと形を変えてしまう。だが、あっさりと快感に身をゆだねるわけにはいかなかった。
「……な、んで……アスランは、大切な親友で……だから、こんな事……」
 したくない、とキラは乱れ始めた呼吸の元で告げる。
「でも、僕はもう君を『誰か』と共有するのは嫌なんだ」
 だから……と告げるアスランの唇がゆっくりと手の中のモノへと近づいていく。
「ひぁっ!」
 先端に口付けられて、キラは驚きに目を見開いた。
「……して貰ったことないの、キラ」
 そんなキラの反応を楽しみながら、今度はそれに舌を絡める。
「やぁっ! 何!」
 ねっとりとした感触が、今まで感じたことがない快感をキラに与えている。その事実がキラの混乱に拍車をかけていた。
「だ、だめ! やっ!」
 何とかその感覚から逃れようとキラは足をばたつかせる。だが、アスランが口の中のモノをきつく吸い上げればその抵抗もあっさりと封じられてしまう。
「……や、だぁ……こんなの、知らない……」
 だから、離して、とキラは涙混じりに告げる。
「駄目だよ。キラが知らないなら、全部僕が教えてあげるから」
 そんな自分の様子にアスランが満足そうな表情をしていたことにキラは気づいていない。何とか今の状態から逃れたいとだけ思っていた。でなければ、この後、アスランの口の中に欲望を吐き出してしまう。それは絶対嫌だ、と思っているのに、アスランが話すたびに不規則に触れる唇や歯がさらにキラを追いつめている。
「やぁ……お、願いだから、離してってばぁ」
 既にキラのそれは限界に近い。震える指で何とかアスランの頭を押しのけようとキラは手を伸ばす。だが、それは彼の髪に絡めるのが精一杯だった。
「いいんだよ、キラ」
 出して、といいながら、アスランはキラの敏感な部分に軽く歯をたてる。そのまま吸い上げられて、キラはあっさりと欲望を解放してしまった。
「……今度は僕の番だね」
 肩で息をしながら涙を流しているキラに、アスランはこう声を投げかけてくる。自分の彼のそれに舌で快感を与えなければならないのだろうか。ぼうっとしたままの頭でキラはそんなことを考えた。
 だが、アスランはキラの力の抜けた体をそのままひっくり返すと、予想もしていなかった場所に口づけてくる。
「アスラン?」
「ここ、誰も触れたことはないんだろう?」
 くすくすと笑いながら、アスランはそこに執拗に舌を這わせ続けた。やがて、キラのそこは刺激に耐えられなくなったというように口を開き始める。
「だから、僕が貰うよ」
 ゆっくりとアスランは体を起こす。そして、かすかに衣擦れの音がした……と思った次の瞬間、キラのそこに何か熱いモノが押し当てられた。
「いい子だから、力を抜いていてね」
 いったい何をする気なのか、それを確かめるまもなく、何かがそこに押し入ってくる。
「やっ! やぁぁぁぁぁっ!」
 次の瞬間、体を切り裂かれる痛みに、キラは悲鳴を上げた。だが、それはさらに奧まで進んでくる。それがアスランの欲望だと認識した瞬間、キラは意識を手放してしまった……


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最遊釈厄伝