この手につかみたいもの
11.5
「やっ……」
胸の飾りに舌を絡められて、キラは思わず声を漏らしてしまう。
「本当に嫌か?」
くすりと笑いながら、フラガは反対側のそれへと指を絡める。
「あぁぁぁっ!」
そのままつままれた瞬間、キラは思わず甘い声を漏らしてしまった。
まさか男の自分がそんなところで快感を得られるとは思ってもいなかった……というのは間違いのない事実である。しかし、フラガの指や舌がそうではないのだと伝えてきた。
「……やっ……少佐……」
キラの口から再び声が漏れる。だが、それは行為に対する嫌悪ではなく、ただ口にでているだけだ。もちろん、それはフラガにはわかっているだろう。さらに刺激を強めてくる。
「あっ、んんっ……」
フラガが刺激を加えるたびに、堪えようもない声が次々と唇をついて出た。その事実を恥ずかしいと思ってもキラには止めるすべがない。それに、押し殺そうとすれば、フラガが嫌がることもわかっている。それだけの回数、こんな行為をしてきたのだ。
しかし、今日はいつもと違っている。
普段ならキラのそれが反応を示せば、フラガはすぐに触れてくれる。
それなのに、今日はどうしたことかそこへの刺激はまだ与えられないのだ。
「……ど、ぉして……」
思わずその想いが唇から飛び出してしまう。
「たまには本気で泣かしてやろうかと思っただけだ」
泣きたいんだろう、坊主……と付け加えながら、フラガの頭がゆっくりと下がっていく。
「べつ、に……」
そんなことはない、とキラは続けたかった。しかし、フラガに腰骨のあたりを軽く咬まれただけで言葉は嬌声へとすり替わってしまう。
「俺の前でまで強がるなって」
例え志願して軍人になったのだとしても、キラがそのための訓練を受けてきていないことをフラガはよく知っていた。
そして、すべて自分の内へため込んでしまうキラの性格も。
このままではいつかすべてを抱えきれなくなったキラは壊れてしまうだろう。
「そのために、俺はここにいるんだからな」
違うか……と聞かれてもキラには答えることができない。
「……少佐……」
その代わりというように、キラの指がおずおずとフラガの髪に絡みついてきた。
「僕は……ここにいてもいいのですか?」
キラの口からこぼれ落ちた問いかけ。
その言葉の裏に隠されている意味を、フラガはすべて知っているわけではないだろう。
自分はまだ『敵』であるアスランの存在を求めてしまっている。
同時にフラガの側にいたいともキラは思ってしまう。
そんな身勝手な自分がこうしてフラガの側にいてもいいのか。
キラには未だにわからない。
「ここ以外にどこに行くんだ?」
フラガがため息と共に言葉を吐き出す。
「坊主はここにいればいい。少なくとも、そうすれば俺が坊主の後悔を半分は引き受けてやれるからな」
言葉と共にフラガの指がキラのそれへとからんだ。
「あぁぁぁっ!」
ようやく与えられた刺激に、キラの体は歓喜に震える。しかし、彼の目尻からは何故か涙がこぼれ落ちていた。