小さな約束
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ようやく、誰もが妥協できる内容へとまとめることが出来た。
「後は、締結式の日程だな」
ため息とともにウズミがそう口にする。
「確かに。あれの引き渡しはその後でよかろう」
それにミナがこう言い返した。
「あの子らはもうじき、ここに戻ってくるらしいしな」
さらに彼女はこう付け加える。
「そうか。それでは早急に話をつめなければなるまい」
その言葉にウズミが頷く。
「その前に出迎えてやれ」
ミナはあきれたような表情を作って彼を見つめた。
「いったい、いつからあれと二人だけで話をしておらぬ?」
そう言われて、ウズミは視線を彷徨わせ始める。
「あれを育てたのはお主だろう? なら、せめて親として話を聞いてやれ」
結婚もしていない自分が言うべきことではないのかもしれないが。ミナは苦笑とともにそう続けた。
「状況が落ち着いてからでも遅くはないだろう?」
下僕候補はいるのだし、とウズミは言ってくる。
「……まぁ、あれは捕まえておけばラウに対する嫌がらせにはなるか」
優秀だし、と続けた。
「後で考えておこう」
時間はたくさんの超されているからな。そう告げると、ウズミもうなずき返してくる。
「さて、デッキへ行くか」
いい加減、戻って来ているだろう。そう告げてミナはきびすを返す。
「そうだな」
ウズミもそう言って後をついてくる。そうやら、カガリと話をする気になってくれたようだ。
「さて……あやつらはいつ押しかけて来るかの」
当然、この情報はラウやギルバートにも伝えられるはずだ。あるいはラクスからシーゲル達へと連絡が行っているかだ。
それでも彼らは限られた範囲以外自由に移動が出来ない。そして、デッキはその範囲外にある。だから、すぐに駆けつけることは難しいはずだ。
その間にキラを隔離できればいいが。
しかし、それは難しいだろうな。そう思う。
きっとラクス達が邪魔しいてくれるはずだ。
しかし、とミナは笑う。
こちらにはカナードがいる。彼が適当に出し抜いてくれることを期待すべきだろう。
「ギナは先に行っているかもしれんな」
ウズミがふとそんなことを口にする。
「あれはキラが気に入っているからの」
苦笑とともにそう言い返す。
まぁ、それはそれでかまわない。むしろ、そのおかげでギナが扱いやすくなっているような気がする。そんなことも考えてしまう。
「オーブに帰ってきてくれればいいが」
「本人次第だな、それは」
ウズミの言葉にミナはそう言い返した。同時にデッキに到着する。
「今ついたそうだ」
想像通りと言うべきか、先に来ていたギナが自分達に気がついた瞬間、こう告げた。
「それと、あのこと話し合うためにしばらく部屋を専有するが、かまわぬよな?」
もちろん、レイは連れて行く。彼はそう続ける。
「私も同席する」
「なら、一人で一人ずつだな」
「……お前たちは……あまりあちらと
騒動を起こしてくれるな」
ウズミが笑いながらそう言ってくる。それでも、止める気はないらしい
「わかっておる」
ミナはそう言って笑い返した。
もっとも、そうして作られた時間はそう長くはなかったが。
「まさかお前が敵に回るとはな」
ラウに向かってギナがそう言う。
「保護者として当然のことです」
即座に彼はこう言い返してくる。
「キラの意思を尊重してくれるなら、何も言いませんよ?」
それが本心なのかどうか。
「この場でも平然としていられるなんて、一番の大物はキラか?」
「……単に慣れているだけじゃないでしょうか」
ミゲルの言葉にレイがこう言い返す。
「かもしれねぇな」
ミゲルはすぐに同意をする。
「どちらにしろ、どちらかが妥協するまで治まらないだろうな」
そう呟く彼に、レイは頷いて見せた。