小さな約束
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そこにあったのは膨大なデーターだった。
「これ、どうやって運べばいいんだ?」
カガリがそう言ってくる。
「……これくらいなら、大丈夫だよ」
サハクから借りたサーバーに移動できる、とキラは言い返す。不思議なことに、すぐにその方法は脳裏に浮かんできた。まるで最初から知っていたかのようだ。
あるいは、実の両親が準備をしておいたのかもしれない――どのような手段かはわからないが――
「データーなら、圧縮できるし」
キラはそう付け加える。
「あぁ。そうか」
カガリはそう言って頷く。
「お前の専門だったな、そっちは」
「正確には違うんだけどね」
苦笑とともにキラはそう言い返した。
「僕の専門はデーターの分析だよ。そのほかのことはみんな、そのための下地みたいなもの」
プログラミングの方は趣味だが、と続ける。
「……どこが違うのかよくわからないな」
カガリはため息とともにそう呟く。
「どちらにしろ、この状況を何とか出来るならそれでいい」
さらに彼女はそう続けた。
「それでいいの?」
「言い分けないだろう。戻ったらしっかりとウズミ様に報告をする。ちゃんと教育し直されろ」
わきで聞いていたカナードがため息混じりに口を挟んでくる。
「ともかくこれは放っておいて、だ。キラさっさと済ませてしまえ」
カガリの襟首をつかみながら彼はそう続けた。
「はい」
確かに少しでも早く終わらせる方がいいだろう。そう判断して、キラは小さく頷いて見せた。
「そうか、終わったか」
カナードからの報告にミナは小さく頷いて見せる。
「では、すぐに戻ってこい。ただし、気を付けての」
どこに何が潜んでいるのかわからない。だから、と言外に告げた。
『わかっています。レイもミゲルもいるから大丈夫でしょう』
カナードは冷静にそう言い返してくる。
「そうか。一応、近くにパトロール隊がいる。乗組員は全員アスハのサハクだから安心して頼れ」
彼らだけでも対処は可能だろう。
しかし、だ。今キラ達が持っているデーターは世界になくてはならないものだ。少しでも危険は減らしたい。
『わかっています』
カナードは即座にそう言い返してくる。
『極力戦闘は回避して最速で帰りますよ』
さらに彼はこう付け加えた。
「待っておる」
この言葉とともに通信が終わる。
「我らも迎えに行った方がよいか?」
その瞬間、彼女の隣で話を聞いていたギナがこう問いかけてきた。
「……必要あるまい。既に、あれを行かせている」
小さな笑いとともにミナはそう言い返す。
「あれか」
「あぁ。あれだ。少しぐらいこき使っても罰は当たるまい」
「確かに」
ギナがそう言って笑う。
「さて……またあちらとの話し合いに戻るか」
つまらないが、と彼女は呟くと体の向きを変えた。