小さな約束
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カナードの背後から顔を覗かせるキラを見て、安心した。
どうやら、彼は自分を嫌いにならないでいてくれたらしい。
どうやら、自分はこの小さな――と言うには大きくなったが――子供に予想以上に依存していたようだ、と心の中だけでラウは呟く。
「……落ち着いたか?」
ミナが二人にそう問いかける。
「まだ、完全に納得したわけではないですけど……」
キラが小さな声で呟くようにそう言った。
「まぁ、キラが私の片割れでだと言うのは納得したな。どちらが上なのか、まだ結論が出てないが」
カガリはカガリで、真顔でどうでもいいことを口にしてくれる。しかし、その内容に誰もが微苦笑を浮かべずにはいられない。
「あまり気にするな」
ギナがキラに向かってそう声をかけている。
「……わかってます」
キラはそう言い返した。
「それよりも、両親のお墓はどこにあるのでしょうか」
この問いかけにギナはミナへと視線を向ける。
「オーブ本土の近くの小島だ。安全が確保できればいずれ連れて行こう」
ミナは即座にこう言い返す。
「サハク所有の島だからな。他の者は我らの許可がなければ入れない」
その言葉にキラは目を丸くしていた。
「ユーレンさんはサハクの分家出身だ」
ラウはそう口にする。
「しかも、そこの二人の面倒をまめに見ていたし、ミナさま達も彼になついていたな」
そう続けたのはムウだ。
「ついでに言えば、ヴィアさんはアスハの人間だぞ」
だからこそ話が厄介になるのだ、と彼はため息をつく。
「厄介とは?」
その言葉にカガリが反応を返す。
「ウナトがヴィアさんに横恋慕していただけだ。既に嫁を迎えておったのにな」
全く、とギナがあきれたように告げる。
「もっとも、セイランももう終わりだがな」
今回のことで、と彼は続けた。
「……ギナ様が中心になっていたのでは?」
「そう言うお前も協力したではないか、カガリ」
カガリの言葉にギナが即座に反論を返す。
「どちらにしろ、ブルーコスモスがオーブの中枢に介入してくることはないだろうな」
後はプラントとの関係だけだ、とミナがさりげなく話題を変える。
「とりあえず、根回しはすんでいますよ」
ギルバートが報告をした。
「だから、ラクス様がここにいらっしゃるわけですし」
「だいたいのことは知っております。ただ、キラとカガリの実のご両親が研究をされていたとは知りませんでしたが」
ギルバートの後に続いてラクスがそう言う。
「もっとも、それとわたくし達の友情は別問題ですわ」
キラがキラである限り、自分はキラと友だちになっただろう。ラクスはそう言って微笑む。
「だよな。そもそも、初めて会ったときのキラは普通の子供だったし」
だからこそ、余計に気になったのだろうが。ミゲルはそう続けた。
「ともかく、だ。詳しいことはこれからあちらと煮詰める。今しばらく、ここにいてもらわなければならん」
ミナが申し訳なさそうに言葉を口にする。
「はい」
そう言いながらもキラはラウへと視線を向けて来た。
「明後日、使節団と合流すればいいからね。それまではここにお邪魔させてもらう予定だよ」
この言葉に、キラが嬉しそうに微笑む。
「……ずいぶんとなつかれているな」
どこかすねたような口調でムウが行ってくる。しかし、この男がすねてもかわいくも何ともない。
「大切にしてきたからな」
そう言い返すと、キラを手招いた。