小さな約束
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「どうやら、終戦まで持ち込めそうだな」
通信を終えたミナがそう言って笑う。
「ミナ様?」
「捕虜の中にブルーコスモスの盟主がおるそうだ」
頭が抑えられては戦争を続けられないだろう。ミナはそう続ける。
「でも、すぐに次が出てくるんじゃないですか?」
レイはそう問いかけた。
「だが、次が決まるまでに時間はある。その間に手を打てばよいだけよ」
確かにそうかもしれない。だが、とレイは口を開こうとする。
「そのための準備もしてきたからの」
だが、それよりも早くミナがそう言った。
「なら、大丈夫ですね」
キラが嬉しそうに頷いている。
「もちろんだ。ただ、今しばらくはここでおとなしくしておれ。完全に安全だと判断できればあちらに送っていこう」
皆のこの言葉にキラが小さく頷いて見せた。
「よい子だな、キラは」
ミナが微笑みながらそう言う。
「何、すぐよ。膿は一気に出し切らねばな」
そのためにウズミ達も動いているはずだ。彼女はそう続ける。
「そういうことだから、余計な手間はかけさせるでないぞ、カガリ」
「なんで私だけ!」
「お前が一番心配だからに決まっておろう」
確かに、と心の中でレイは呟いてしまった。
室内に兵士達がなだれ込んでくる。彼らの軍服の腕につけられている部隊章から判断して、憲兵隊だろうか。
「いったい誰の許可があってここに入ってきたんだよ!」
ユウナは怒鳴りつけるようにそう問いかける。
「私だ」
そう言いながら姿を見せたのは、ホムラだ。
「……ホムラ殿? 何故……」
彼がここにいるのだろうか。
「何故? もちろん、君を逮捕するためだよ」
罪状はわかっているだろう、と彼は続ける。
「ボクは何もしていない!」
即座にユウナは言い返す。その言葉にホムラがあきれたような視線を向けて来た。
「他家のことは何も言いたくないが……ウナト達はどのような教育をしてきたのだ?」
自覚していないとは思わなかった。彼はさらに言葉を重ねる。
「まぁ、いい。それに関しても後で本人達に聞けばいい」
だが、彼はすぐにこう言い直した。
「君の罪状で一番大きいのは情報漏洩だね。他にも未成年者略取や婦女暴行未遂――いや、未遂だけではないか――などか。君自身が指示したメールを入手できたから裏付けを取るのは簡単だったよ」
「あれは、誰かがボクを陥れようと……」
ユウナはとっさにこう言い返す。
「私は『裏付けがとれている』と言ったぞ?」
あきれたような声音でホムラが言葉を綴った。
「証拠は挙がっている。これ以上の弁明は、法廷の場でするのだな」
彼はそう続ける。
「連れて行け」
ホムラのその言葉とともに兵士達が歩み寄ってきた。
「ボクに触れるな!」
ユウナはそう叫ぶと大きく手を振り回す。
同時に、セイラン家で雇っている者達へと視線を向けた。この者達を止めさせようとしたのだ。だが、いるはずの者達の姿は室内にはない。
自分を見捨てて逃げたのか?
ユウナは即座にそう判断する。同時に、その者達に対して怒りがわき上がってきた。
「後で後悔するぞ!」
誰に言うと話にそう叫ぶ。
「……どうだろうね。連れて行け!」
その言葉とともに兵士達の腕がユウナをしっかりと捕まえた。