小さな約束

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 まだ終わらないのか。
 自分達はまだ苦しまなければいけないのか。
「……どうやら、あいつらは俺たちを使いつぶすつもりのようだな」
 小さな声でそう呟く。
 それならばそれでいい。
 もうじき、自分は何もわからなくなるだろう。
 その時に、せめて一矢報いることが出来ればいいのに。
 そう考えていた。

「なっ!」
 いきなり、あの三機の動きがおかしくなった。
 ミゲルがそう思うと同時に、それらは背後にいる自分達の母艦へと突っ込んでいく。慌てて旋回行動に移ったようだが、戦艦がMSの機動性にかなうはずがない。
 三機はほぼ同時に母艦へと突っ込む。
 そして、光へと変わっていった。
「……何があったんだ?」
 信じられないその光景に、ミゲルはそう呟く。
「でも、まぁ、チャンスだよな」
 今ならば、あれを拿捕できるだろう。
「やりますか」
 あれを拿捕できれば、それなりの成果として認められるはずだ。
「隊長が何かをするときの役に立つだろうし」
 それがキラのためになるならば、十分だ。
「と言うことで、やりますか」
 面倒だが、と呟く。
 バッテリーの残量を確認してから、ミゲルはジンを移動させた。

 モニターの隅にメールの着信を告げるアイコンが出ている。
「……誰からだ?」
 この状況で、とラウは顔をしかめた。
 だが、すぐに思い直す。この状況だからこそ、送り主は通信ではなくメールを送ってきたのだろう。
 確かに、存在に気づいて不快を覚えるが、声によって邪魔されるわけではない。メールならば、いつ読んでもかまわないのだ。
 だから、と意識を戻す。
「読むのは目の前の相手を排除してからだな」
 そう呟くと、相手との距離を測る。
 この距離であれば、相手がどのような動きをしようと対処とれるだろう。
 しかし、それではだめだ。
「やはり、一撃で墜とすか」
 時間が惜しい、とラウは付け加える。
「あれならばともかく、あの程度のパイロットならば可能だろう」
 戦場に『絶対』はない。それでもこう口にしたのは、自分を鼓舞するためだ。
 何事も、為せば成る。
 そう呟くと、シグーを相手に向けて急発進させた。予想外のことだったのか。すぐに相手は対処できなかったらしい。
「悪いね。君個人にはなんの恨みもないんだが」
 自分達の勝利のために死んでくれ。そう付け加えると、ラウは引き金を引いた。

 エンジンを壊され、地球軍の輸送船が動きを止める。もちろん、それは偶然ではない。
「さて……これで我らの仕事は終わりかの」
 プラントに格が落とされることはこれでなくなったのではないか。後はザフトに任せておいても大丈夫だろう。
「と言うことで、我らは撤退するぞ」
 近くにいるであろうムウに向かってそう告げる。どこでなにをしていたのかはわからないが、生きているだろうと言うことは信じていた。
『やっとかよ』
 実際、すぐに言葉が返ってくる。
『でも、バッテリーの残量が心許ないんだが……』
 使い慣れない期待だったからか。それとも補助システムの影響か。どちらかはわからないが、とりあえず不安な状況らしい。
「慣性飛行をすればよかろう。適当なところで拾ってやる」
 デブリのふりをしていれば撃墜される可能性は少ないのではないか。言外にそう告げる。
『めちゃくちゃ不安だけど、それしかないか』
 まぁ、生き残れたからいいことにしよう。彼はそう続けた。
「そういうことだの」
 生き残っていれば後は何とでもなる。
「これからが忙しいかもしれぬがな」
 オーブ側のゴミ排除とあの二人の残した研究データーの公表時期の見定め。やることはたくさんある。
「だが、これで未来への道が繋がったことだけは事実であろうな」
 ギナはそう呟いていた。

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最遊釈厄伝