小さな約束
136
「イザーク!」
被弾したデュエルを見てアスランはとっさに叫ぶ。
『無事だ……もっとも、このままでは戦力にならないどころか足手まといだろうが……』
どうやらマニピュレーターに異常が出ているのだろう。指を動かしながらイザークが言い返して来る。
「一人で下がれるか?」
無理なようならばフォローが必要だろう。いざとなれば、イージスでヴェサリウスまで運ぶしかない。
『俺を誰だと思っている』
だが、イザークから帰ってきたのはいつもの彼のセリフだ。
『貴様達の足手まといにはならん。安心しろ』
言葉とともにデュエルが移動を開始する。
『そう言う貴様達こそ、無様なまねはするなよ?』
しっかりと釘を刺してくれるのを忘れないあたり、やはりイザークだ。
「わかっている」
『ラクス嬢に恨まれるのは怖いですから』
『ニコル、お前なぁ……』
こんな軽口をたたけるようならばまだまだ余裕なのだろうか。
それともただの強がりなのだろうか。
どちらにしてもまだまだ士気は落ちていないと言うことだけは事実だろう。
「キラが無事なら被害は少ないだろう」
とりあえず、とアスランは呟く。
「問題は、ラクスにキラを独占されることか」
他のメンバーがいれば大丈夫のような気はするが、と心の中だけで付け加える。
『……そうなったら、キラがぶち切れそうだな』
誰かさんがあれこれとやっていたときのように、とイザークが嫌みを言ってきた。
「後で覚えていろよ、イザーク」
『そう言うなら、ちゃんと生き残って帰ってくるんだな』
こいつは自分が好きなのか嫌いなのか。そう言いたくなるセリフを残して、イザークはそのまま戦場を離脱していった。
即座に近づいてくる味方の機体は、おそらく回収用のジンだろう。
『あいつなりに心配しているんだろう』
ディアッカがあきれたような声音で言ってくる。
『本当に素直じゃないな』
『今回ばかりは否定できませんね』
その間にも二人はイザークが撤退しやすいように敵機を叩き落としていた。もちろん、アスランも、だ。
「しかし、しつこいな。いい加減、あきらめればいいものを」
それともまだ何かあるのか。
「……核を積んでいる艦はどれだ?」
ふっと思いついてこう呟く。
『探してきますか?』
『今は無理だろう……この状況じゃ支えきれない』
不本意だが、とディアッカがニコルに言い返している。
「隊長かミゲルが見つけていてくれればいいが」
『そうですね』
アスランの言葉にニコルが頷く。
『とりあえず、手近な敵艦から叩いていけばいいかもな』
わからないなら、とディアッカが言う。
『そう単純に行けばいいんですが』
「しかし、それしかないだろうな」
少なくとも、MSやMAに積み込まれているとは思えない。だから、適当に叩いていけばあちらがぼろを出してくれるのではないか。
『じゃぁ。そういうことで』
言葉とともにバスターのガンランチャーを展開する。
「バッテリーの残量には気を付けろよ」
止めても無駄だろう。そう判断してアスランはそう告げる。
『わかっている』
言葉とともにディアッカが引き金を引いた。