小さな約束
129
ユウナに対するお仕置きの様子は当然、ミナにも届いていた。と言うより、サハクに対策を依頼してきたのだ、セイランは。
「モルゲンレーテに指示を出せるのはうちかアスハだけだから当然かもしれぬが……厚顔無恥とはこのことかもしれんな」
笑いながらミナはそう言う。
「それでどうするのだ?」
ギナが問いかけてくる。
「協力する必要があるのか?」
さらに彼は続けた。
「せねばせぬで騒ぐだろうな」
ミナは苦笑混じりに言い返す。
「だから、したのものに巻かせるようにすることにした。カナード以上の実力の持ち主でなければ、どこがおかしいのかわからぬようだからの」
自分も所見ではわからなかった。ミナはそう告げる。
「なるほど。それならば貸しを作っても大丈夫か」
ギナはそう言って頷く。
「醜聞は消そうとすればするほど真実だと知らせることになるからな」
今でもユウナは墓穴を掘っていることだろう。
「もっとも、よいことばかりではないがな」
「姉上?」
どういう意味だ、とギナが言外に問いかけてくる。
「ウナトとブルーコスモスも加わってカガリを探してるらしい。あるいは、ここにも来るかもしれん」
もっともそれは最後の最後だろうが、とミナは考えていた。
「ここは我らの城だからな。隠そうと思えばいくらでも隠せるというのにの」
ここの詳細な設計図は自分達以外持っていない。そして、とギナは笑う。
「居心地のよい隠れ家もあるであろう?」
「そうだな」
元はと言えば、キラのために作った場所だ。だが、カガリを隠すのにも使えるだろう。
「あやつらも抜き打ちで入ってこられまい」
アメノミハシラの構造上、とギナは笑った。それは間違っていない。
「もし押し入ろうとするなら、我らが全力で迎え撃つだけよ」
さらに彼は言葉を重ねる。
「……そうならぬことを祈るだけだな」
ミナはため息をつくとそう告げた。
イザークが忌々しげにロッカーを蹴る。
「また逃げられた」
気に入らない、と彼は続けた。
「それはみんな同じだろう?」
ディアッカがそんな彼をなだめていく。
「それに……こちらも連中の連携を崩せるようになってきたしな」
彼の言葉は慰めなのだろうか。それとも、と思いながらもアスランは視線を移動させた。
「問題は仕留められないことだろうが」
イザークがそう言い返している。
「……でも、連中がここにいると言うことは本国もオーブも無事だと言うことですよ」
ニコルのこの言葉にようやくイザークは怒りを鎮火させようとし始めたようだ。
「問題は、だ」
アスランはため息とともに言葉を口にし始める。
「あの三機が陽動だという可能性があると言うことか」
連中をはじめとした軍がザフトの目を引いている間に何かをしているのではないか。そんな不安がぬぐえない。
「それに関しては、僕たちがどうこうできる問題ではないでしょう」
ニコルが行っているのは確かに正論だ。だからこそしゃくに障る。
「わかっていても、守るためには何とか出来ないかと考えてしまうんだよ」
この言葉に三人は苦笑を浮かべた。
「ともかく、連中が俺たちから離れないようにするだけだな」
それだけ他の者達の負担が軽くなる。
「不本意だが、仕方があるまい」
イザークの言葉に、他の者達も頷いて見せた。