小さな約束

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 いらいらとしながらユウナは指の爪をかむ。
「まだ見つからないのか?」
 そのままそばにいた男にこう問いかけた。
「申し訳、ありません」
 そう言って男は肩をすくめる。
「ウズミ様方は皆、歴戦のレジスタントでいらっしゃいますし……民の中には、あの方々に味方するものも多く……」
 その言葉に、ユウナは忌々しそうな表情を作った。
「どうして、あいつらは犯罪者をかくまうんだ?」
 意味かわからない、と彼は呟く。
「あの方々ががんばったからこそ、オーブの独立が保たれたからでしょう」
 少しだけあきれたような声が返ってくる。
「もっともあなたがお生まれになる前ですから知らなかったという可能性もおありでしょう。しかし、歴史の教科書に載っていますよ?」
 そう続けられて逆に目を丸くする。
 自分はそんなことを知らない。
 そもそも、自分は学校に通っていないのだ。家庭教師が教えてくれなかった事実をあれこれ言われても困る。
 しかし、とユウナは考える。
 民衆がそう考えているというのであればまずい。彼らの意識を変えるのはそう簡単ではないのだ。
「父上もそのあたりのことをきちんと修正しておいてくださればいいものを」
 ますます地球連合のイメージが悪くなるだろう、とそう呟く。
「まぁ、いい。少しでも早くウズミ様方には戻っていただけ」
 そして、早々に引退してもらおう。カガリならば、結婚さえしてしまえば後はいくらでも言うことを聞かせられるはずだ。
 それが無理でも、どこかに閉じ込めてしまえばいい。
 後問題があるとすればサハクの双子か。
「……連中でも、四対一ならば従わなければいけないよな」
 ならば他の四氏族を確実にまとめてしまおう。きっと、ウナトもそう考えているはずだ。
「後は、カガリだな」
 ウズミが無理ならば彼女だけでも身柄を確保したい。そうしてしまえば、何とかなる。女性に言うことを聞かせる方法はいくらでもあるのだ。
 そう考えていたときである。
「大変です!」
 セイランの執事が飛び込んできた。
「何だ?」
 家のことならば母に言え、と思いながら聞き返す。
「とりあえず、これをご覧ください。屋敷のプリンターからプリントアウトされたものです」
 そう言いながら、彼は十数枚の紙を差し出して来る。
「……何だ」
 このようなものを、と思いつつユウナはそれを手に取った。そして姿勢委を落とす。
「げっ!」
 次の瞬間、彼はその場に凍り付く。
 何故、これがここにあるのか。
 はっきり言って、これが人目に触れるのはまずい。
「……どうやら、これが無差別にあちらこちらに送信されているようです……若様のパソコンから」
 いったい何故、そういうことになっているのか。
「とりあえず、ネットから切断しろ!」
 その後で、何とかしてもみ消さなければいけない。
 しかし、いったいどうすればいいのか。
 ユウナには対策がすぐに思いつかなかった。

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最遊釈厄伝