小さな約束
125
このまま、何事もなくアメノミハシラにたどり着ければよかった。
しかし、そうはいかないらしい。
「……本土が攻撃された?」
信じられないという声音でカガリが呟く。
「オーブは中立だよね? いったいどこが?」
それは当然だろうと思いながらキラも口を開いた。
「セイランのバカが何かしでかしたのだろう」
即座にギナがそう言い返す。
「ウズミ様方はご無事なのでしょうか」
レイが呟くように口にした。
「わからん。だが、連中でもウズミ達はそう簡単に処分できん」
下手に処分をすれば国民だけではなく地球連合に所属していない国々からの反発を受けるだろう。
それに、後継者の問題もある。
「だからカガリを狙ったのかな?」
「……私なら好きに出来ると考えているなら大間違いなのにな」
キラの言葉にカガリがこう言い返した。
「どちらにしろ、ここでは情報が集まらん。ウズミ達ならば自力で何とかするだろうよ」
出来ないようではオーブの代表首長にはふさわしくないのではないか。
「それよりも、厄介なのはセイランだな」
ギナがため息とともに口を開く。
「やはりつぶしておくべきだったか」
彼はさらにそう続ける。
「今からでも遅くはあるまい」
ミナは彼に向かってそう言う。
「そのためにもアメノミハシラに戻らんとな」
あそこにはセイランも手出しできない。もちろん、地球軍もだ。
「……僕にも何か手伝えますか?」
キラがそう問いかけてくる。
「そうよの」
その言葉にミナは首をかしげた。
「あの男の恥ずかしいデーターでもネット上に流してもらおうかな」
ついでに失態をごまかしているデーターも流出させようか。そう付け加える。
「こうなったら、徹底的に羞恥心を煽ってぼろを出させよう」
それはそれで恥ずかしいだろうな、と彼女は笑った。
「……そのくらいでいいんですか?」
キラがそう言って首をかしげる。
「お前はプラントの人間であろう? それ以上のことは内政干渉になるからの」
だが、データーを流す程度であれば子供のいたずらですむだろう。
「いっそ、あいつの恥ずかしい日記でも暴露すればいいんだ」
カガリがはき捨てるようにそう言った。
「あるよ、そう言うウィルス」
キラが即座に言葉を返す。
「あるんだ」
「僕が作ったのじゃないけどね。その人の個人端末の中からランダムにデーターを流出させるのがあるよ」
「それ、おもしろそうだな」
カガリがそう言って笑う。
「じゃ、それ使おう。いいですよね?」
言葉とともに彼女が視線を向けて来た。その瞳が妙に輝いているような気がするのは錯覚ではないだろう。
「もちろんだ。いっそ、地球軍の上層部やブルーコスモスの幹部の端末にも感染させてやりたい位だな」
勝手に自滅してくれるだろう、とミナもうなずき返す。
「楽しそうだの」
ギナもそう言って笑う。
「じゃ、決まりでいいな」
キラにさせるのであればそのくらいが適当ではないか。
「あいつの恥ずかしい日記を読んだ人間がどんな反応を見せるか、楽しみだな」
カガリが妙な方向で暴走しそうなことだけが気にかかる。だが、これで不安をごまかしているのかと思えばいいのか、と考えることにした。