小さな約束
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不意に艦内の照明が瞬き出す。
「何だ?」
何が起きているのか、と艦長が問いかける。
「わかりません。今、確認中です!」
クルーの一人がそう言い返す。
「システムがダウンしている!」
だが、すぐにこんな叫びが上がる。
「どういうことだ?」
この艦は外部からのウィルス攻撃は受け付けないはずだ。それなのに何故、と誰もが驚きを隠せない。
「……あれがバグでも引き起こしたわけではあるまいに……」
艦長がそう呟く。
「いえ……あれは独立したシステムですので、こちらには影響を及ぼさないはずです」
「ならば、何故!」
理由がわからない以上対策の取りようがないのではないか。
「……なにかのプログラムが暴走しているものと思われます」
設定ミスで無限ループに陥っているのではないか。そう言ったのはCICを担当しているものだ。
「対策は?」
「……システムの総入れ替えしかないかと……」
こちらからの入力を受け付けない以上、と彼は言葉を返してくる。
「無理だ……」
ため息とともに艦長はそう呟く。
戦闘中にそのようなことをするというのは、ある意味自殺行為だ。
しかし、それをしなければ敵の的になるだけだろう。
どうするべきか。
すぐに答えを出さなければいけないことはわかっていても、どうするべきか判断できなかった。
「……敵艦の動きが止まったようだな」
バルトフェルドがそう呟く。
「確かに。あちらで何か対策を取っていたのでしょうか」
ダコスタがこう問いかけてくる。
「可能性は否定しない」
しかし、それはいったいどのような方法なのか。そう聞かれてもすぐには答えられない。
あちらに問いかければ答えてくれるだろうか。
しかし、だ。
その前にやるべきことがある。
「どちらにしろ、これで戦艦からの攻撃はなくなったわけだ」
後は、と続けた。
「出撃しているメビウスの殲滅だけだな」
機体の性能とすればMSに遠く及ばない。だが、その数だけは驚異なのだ。
「と言うことで、俺も出てくる」
「隊長! 待ってください!!」
ダコスタが慌てたように彼を呼び止める。だが、それを無視してバルトフェルドはさっさとブリッジを後にした。
「ここは地球じゃないんですよ!」
どうやってもみ消せというのか。
「がんばってくれ、ダコスタ君」
そんな彼に向かって、バルトフェルドはこう呟いた。