小さな約束
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相手の連携に微妙な崩れが確認できる。
「どうやら、そろそろのようだの」
ミナは小さな声でそう呟く。
「時間切れ、ですか?」
カガリが即座に問いかけてきた。
「ラウの報告は正しかったようだ」
小さなため息とともにミナは言い返す。
「つまり、あれも正しいと」
厄介だな、と彼女は続けた。
「ミナ様?」
「お前はまだ知らずともよい……もう少し腹芸が出来るようであれば伝えたがな」
そうでなければキラに気づかれる。
それだけならばかまわない。
問題はそこから自分達の秘密に行き着かれることだ。
カガリであれば問題はない。知ったとしても、真実まで行き着ける技量が彼女にはないのだ。
だが、キラは違う。
あの子供は平然とサハクのマザーの中に隠されているデーターまで覗くことが出来る。その気になれば関連しているデーターも探し出すだろう。
その結果、どれだけショックを受けるかわからない。
最悪、あの子供が世界を滅ぼしかけないのだ。
「……私はまだ未熟ですか……」
カガリが悔しげにそう呟く。
「身内に内心を悟られるようではな」
親しいものにも秘密を悟られるではまだまだ甘い。そう言ってミナは笑う。
「私もウズミも、お前にばれたことはないぞ」
腹の探り合いでも、と続ける。
「……わかりました……」
カガリは悔しげにそう呟く。
「今は無理でも、いずれ、出来るようになって見せます」
彼女のその決意にミナは笑みを浮かべた。
「何事も努力するものは報われるであろうな」
「だといいんですけど……少なくとも、キラとラクスには笑われたくないです」
どうやら年の近い友人――しかも、同じような立場の――が増えたことが彼女にはいい影響を与えたらしい。
「もっとも、あいつはこちらの方が笑ってやりますけど」
「セイランのバカ息子か」
カガリはよほど彼のことが嫌いらしい。もっとも、その気持ちがわからなくはない。
「……あいつが努力しているところは見たこともなければ、噂も聞いたことがないですからね」
努力してもあれなら、あきれるしかない。カガリはそう続ける。
「いっそのこと、あいつをこの状況に放り出してみたいです」
そうすれば、少しは頭を使うのではないか。カガリのその言葉にはミナも同意だ。
「今度実践してみるか」
適当に言いくるめて、と呟く。
「その前にここから逃げださんとな」
もっとも、その心配は杞憂のようだ。
「ギナ様達が優勢ですね」
誰が見てもそうだとしか言えないだろう。
しかし、それは敵のパイロットが《時間切れ》になっただけだ。実力だけであれば拮抗していたと言っていい。
「……やはり、あいつらは早々に叩きつぶさんとな」
人間を自分達の好きにしていい道具だと考えている者達は、とミナは呟く。
「そのためにもアメノミハシラに着かなければならん」
彼女がそう付け加えたときだ。
「ミナ様。準備が完了しました」
待っていた報告が届く。
「では、開始しろ」
ギナ達に警告してからな。そう付け加えた瞬間、ブリッジクルー達が行動を開始した。