小さな約束

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 足が速いとはきいていたが、これほどまでとは思わなかった。ただ、とバルトフェルドは呟く。
「砂漠にいる俺には過ぎたもんだな」
 と言っても、今回の任務では必要だったから借りてきたが。そう彼は続けた。
「確認しました。アマノトリフネです!」
 部下の一人が報告をしてくる。
「無事か」
「おそらく。地球軍のMSの他に未確認の機体が二機あります。位置から推測して、オーブのものと思われます」
 確認しますか、と彼は問いかけてきた。
「識別信号が出ているはずだ」
 ダコスタがそう聞き返している。
「事前にデーターは渡されていたと記憶しているが……」
 その言葉に、クルーがなにやら操作している。
「確認できました。オーブの機体です」
 と言うことは、サハクの双子が乗り込んでいるのか。それならば、今まで持ちこたえていたと言うのも理解できる。
「さて……気づいているとは思うが、連絡を取ってみるかね?」  必要ならばこちらもMSを出撃させなければいけないだろう。
「了解です」
 即座に通信士がアマノトリフネに呼びかけている。
「まぁ、下手に手を出さない方が無難だろうがね」
 ここから見ても、あの二機の連携には隙はない。
 それに自分が割って入れるか。
 冷静に分析すれば、難しいという結果しかでてこない。強引に割って入れば、撃墜される原因になるだろう。
 では、自分達に何が出来るか。
「周囲に他の艦艇は?」
 地球軍の艦艇が彼らに接近するのを邪魔するのは確実に出来るだろう。
 当面はそんなとこか、と心の中で呟いた時だ。
「アマノトリフネとの回線、開きました」
 部下の報告が耳に届く。
「こちらに回せ」
「はい。回線を回します」
 彼の言葉とともにバルトフェルドの目の前にアマノトリフネらしきブリッジの様子が表示された。
『これはこれは……意外なところで会うものよ』
 女性にしては硬質な笑みを浮かべながら黒髪の女性がそう言ってくる。彼女が誰かしらないものはいないだろう。
「自分としても予想外でしたよ」
 苦笑とともにこう言い返した。
「休暇で本国に戻っていただけなのですがね」
 言葉とともに肩をすくめてみせる。
「しかし、こうして駆けつけられただけいいとしましょうか」
『確かにな』
 ミナもそう言ってうなずいた。
「それで? 俺たちは何をすればいいですか?」
 下手に介入しない方がいいだろう、と言外に告げる。
『雑魚の掃討を頼んでかまわぬか? あれらもそこまでは手を回せまい』
「わかりました」
 ミナの言葉にバルトフェルドは『やはりな』と思う。下手に介入しなくてよかった、と心の中だけで付け加えた。
「そちらは任せていただきましょう」
 同時に微妙ないらだちを感じる。何というか、自分が必要とされていないのではないかという気持ちになるのだ。
 もちろん、そうではないとわかっている。
 あるいは強敵と戦う機会を奪われたと感じているからかもしれない。
「地球軍の雑魚は、決して近づけませんよ」
 このいらだちは地球軍に八つ当たりをすることで解消させてもらおう。バルトフェルドはそう考えていた。

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最遊釈厄伝