小さな約束

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 センサーにまた新たな敵が引っかかる。
「どれだけの戦力をつぎ込んでいるんだ?」
 カナードはあきれたように呟く。
「それとも、何か理由があるのか……」
 一番可能性があるのは、自分達の出生にかかわる一連のデーターだろう。
 次はカガリやサハクの双子を確保して、オーブを完全に取り込むことか。
「どちらでも、認められないがな」
 それは、自分達の最後の砦を敵に明け渡すことになる。
 いや、自分達だけならば何とかなるだろう。
 問題はオーブの民間人――中でもコーディネイター達だ。
 彼らはナチュラルと共存することを選んだ者達である。中には、ナチュラルと結婚し、子供をもうけている者達もいる。
 そんな彼らがいられるのはオーブだけだ。
「自分達のことだけを考えていられれば楽だがな」
 少なくともカガリやサハクの二人はそうしないだろう、
 キラも、他の者達を切り捨てると知ればショックを受けるはずだ。
 だから、自分に出来ることは一つしかない。
「オーブに帰ってバカを何とかしないと、いつまでも同じことだな」
 そのためにも、この場を切り抜けなければいけないだろう。
「……第一、キラにみっともないところを見せられないしな」
 こう呟いたときだ。
『まさしくの』
 不意にギナの声が割り込んでくる。
「脅かさないでください、ギナ様」
 ため息とともにカナードが言い返す。
『通信機のスイッチを入れたままあれこれぼやいている方が悪い』
 そう言われては反論が出来ない。
「そんなことを言うために連絡をして来たのですか?」
 あきれたような声音を作りつつ、カナードは言い返す。
『それもよいかもしれぬが、今は違う』
 ギナは平然と言い返して来る。と言うことは機会があればやると言うことだろう。
 それはそれで頭が痛い。カナードが心の中でそう呟いた時だ。
『あれらにはどうやら時間制限があるらしい』
「時間制限?」
『ラウからの情報よ。一定時間経てば退くらしいの』
 つまり、それまで持ちこたえればいいと言うことか。
「だから、他の連中も来たと言うことか」
 それで逃げられるのはまずいから、連中が復帰するまで自分達を足止めにする。あるいは、こちらが疲弊していると判断して襲いかかってくるつもりなのだろう。
 しかし、だ。
「プラントから救援が来るとは考えていないのか?」
 めまぐるしく自分の機体の位置を変えながらカナードはそう呟く。
『あちらがそこまでするとは考えておらぬのであろう』
 自国の領域を抜ければ後は見て見ぬふりをする。そう考えていたのではないか。
 だが、自分達がいなくなって困るのはプラントだろう。
 それに、キラには強力な味方がいる。
 間違いなく、プラントから救援が出ているはずだ。
「では、多少無理をしてもかまわないな」
 小さな笑いとともにカナードはビームサーベルを抜く。
『死なぬようにな』
 ギナが笑いながらこう言ってきた。
「ギナ様こそ」
 即座にこう言い返す。そのまま二人は三機の連携を崩すために動き始めた。

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最遊釈厄伝