小さな約束

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「船室に戻っておるか?」
 二機が出撃たのを確認して、ミナが問いかけてくる。
「私は残ります。キラは……戻った方がいいかもしれないな」
 カガリは即座に言い返した。
「でも僕だけ、安全な所にいるのは、不本意です」
 どうして自分だけ、とキラが言外に問いかけてくる。
「そうしておけ」
 だが、ムウがカガリの味方に付いてくれた。
「これからのことは、坊主には刺激が強い。あの二人も、お前さんに怖がられるのは不本意だろうしな」
 個人的には相手がかわいそうだ、とムウは笑いながら続けた。
「そういうことよ。カガリはこれからもこのような場面に出くわす可能性が高い。しかし、お前は違うからの」
 民間人として生きるのであれば戦場を目にする必要はない。ミナもそう言って頷いた。
「……わかりました」
 何かを感じたのだろう。キラは渋々と言った様子で言葉を口にする。
「よい子じゃな」
 ミナが優しい声音で言葉を綴った。
「私もあまりお前に怖がられたくないからの」
 その言葉にキラだけが首をかしげている。
「ギナ様の名誉のためにも部屋に戻っていた方がいいぞ」
 ムウが笑いながらキラにそうささやいているのが見えた。
「これから散々ののしられそうだからな」
 彼はさらに声を潜めるとそう付け加えている。
「そうですね。キラさんがそれを見ていたと知ったら、ギナ様がショックを受けます」
 レイがまじめな口調で同意の言葉を口にした。
 さすがは一番長くキラと一緒にいるだけのことはある。
「……わかった」
 戻る、とキラの口から言わせた。レイのそんな行動に、ミナが満足そうに頷いている。
「では、さっさと戻りましょう」
 言葉とともに彼が手を出し出す。それをキラは素直に握りかえした。
「……いいな」
 思わずこう呟いてしまう。
「まだ機会はあるであろう」
 時間はあるからな、とミナが笑った。
「そのためにもバカには早々に退場してもらわなければならぬ」
 だが、すぐにいつもの表情に戻るとこう告げた。
「そうですね」
 カガリもそれには同意だ。
「人間を道具扱いする連中も嫌いです」
 そう付け加える。
「わかっておる。我らも同じ気持ちよ」
 だからこそ、ここは生き延びねばならない。
「さて、あれらはまじめに戦っておるかな。必要なら、私も出るが……」
 ミナがそう言いながらモニターを見つめる。
「その前に、我らが」
 ミナの脇に控えていたソウキス達が口を開いた。
「わかっておる。行ってくるがよい」
 彼女の言葉に、表情は変えないもののソウキス達はどこか嬉しそうに頷いている。そのまま彼らはブリッジを出て行った。
「さて、乗り切れるかの」
 ミナの言葉に、カガリは視線をモニターに戻す。
 そこではギナとカナードが三機のMSと交戦している光景が映し出されていた。

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最遊釈厄伝