小さな約束
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何度繰り返そうと、出撃前は緊張する。だが、深い呼吸を繰り返すだけで落ち着きが戻ってきた。
「……さて、出撃するとしようか」
言葉とともにギナは操縦桿を握り直す。
「ハッチを開けろ!」
そのままブリッジへと声をかける。
しかし、だ。
『今しばらく待て』
だが、それをミナが止めた。
「何故だ?」
すぐにでも敵を撃破した方がいいのではないか。言外にそう問いかける。
『落ち着け。どうせなら少し遊んでやってもよいのではないかと思ってな』
ミナが笑いながら言い返してきた。
「何か策でもあるのか?」
それならばかまわないが、と告げる。
『今、ちょっといたずらを仕掛けておる最中よ。後数分で終わる』
楽しげな声音で言い返された。と言うことは、邪魔をするとまずいことになると言うことでもある。
「仕方がないの。姉上に従う」
小さなため息とともにギナはそう言い返す。
『よい子だな』
からかうようにミナが声をかけてくる。
「我は子供ではないぞ?」
ギナはため息とともに主張しておく。もっとも、ミナもこの程度ぐらいの反論は予想していたのだろう。
『それでも、お前は私の弟だろうが。同じ年だろうとなんだろうと、弟というものはかわいいものだぞ』
低い笑いとともにそう告げられる。
『まぁ、キラやカガリ、カナードに比べると憎らしさの方が目立つがな』
だから、素直に指示に従え。そう言われて、反論などできるはずがない。
「仕方がないの。我が我慢できる程度にしてくれ」
そう長くは待たないぞ、と言外に告げる。
『安心しろ。作業は終わったようだ。後は送信してしまえばよい』
それに巻き込まれないように終わるまで待て、とミナは言い返す。
「わかった」
理由がわかった以上、我慢できる時間は延びる。
「しかし、結局巻き込んでしまったか?」
ため息とともにそう呟く。
『今度だけ、でしょう。それに直接巻き込んだとは言えないのではないかと』
苦笑とともにカナードが口を挟んでくる。
『キラがあれを作ったのは偶然らしいですからね。もっとも、使う以上、巻き込んだことになるのでしょうが』
何故、あんなものが出来たのか。本人もわかっていないらしい。彼はそう続ける。
「そう言うものかもしれんの」
ギナはそう言葉を返す。
「どちらにしろ、あれらを蹴散らさねば、さらに巻き込むことになるだろうな」
まぁ、よい。そう呟く。
「我らを襲撃してきたことを後悔させてやるだけよ」
自分達の機体の性能を引き出せれば、十分可能だろう。
『ミナ様が出てくる前に片付けたいですね』
「もちろんよ」
こんな会話を交わしていたときだ。
『出撃してよいぞ。好きなだけ暴れてくるがいい』
ミナの言葉に自然と笑みが浮かぶ。
「もちろんよ。出るぞ!」
言葉とともにアストレイを射出装置へと移動させる。
『気を付けろよ』
「わかっている」
言葉とともにギナはアストレイとともに宇宙空間へと飛び出していく。その後にカナードが続いてきた。