小さな約束
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その知らせは密やかに届けられた。
「目標は砂時計から離れたそうだ」
その言葉に周囲の視線が集まる。
「しかも、アスハの後継も一緒らしい」
サハクの双子はともかく、カガリはこちらに引き込みたい。そうすれば、オーブは地球連合の手に入るだろう。
「……捕獲するか」
「出来るか?」
サハクの双子――特にギナの戦闘能力は並のパイロットではかなわない。他にもそれなりの備えがされていると考えていいだろう。
男はそう問いかけた。
「あれらを回せば可能だろう」
別の男がこう言い返す。
「あれらの性能がどれだけのレベルか。それではっきりとする」
違うか? と彼は続けた。
「三人がかりでもかまわん。サハクの片割れと互角に戦えるのであれば、性能は十分だ。量産させればよかろう」
多少金はかかってもかまわない。プラントを手に入れてしまえば十分に回収できるだろう。
「では、すぐにでも」
その言葉に異論は出なかった。
ここ数日、毎日のようにあった敵襲がない。
「いいことなのかもしれないが……何か、引っかかるよな」
ディアッカが小声でそう呟いている。
「確かにそうですね」
ニコルもそう言って頷く。
「でも、確かに助かってますよ」
言葉とともに彼はあるドアを見つめる。
「だよなぁ」
今日も出てこられないんだろうな、彼らは。そう付け加える。
「本当。いつになったら自力で出てこられるんでしょうか、彼らは」
「さぁな。今日も時間切れでアウトじゃね?」
いい加減、あきらめればいいのに。閉じ込められている二人になのか。それとも閉じ込めている相手になのか。自分でもわからない。
「困ったものです」
ニコルがそう言ってため息をつく。
「全くだな」
どうしてここまで反発するのかがわからない。
「キラさんに説得してもらえばよかったでしょうか」
ニコルがこう呟いている。
「あんまりキラをあてにするのもな」
むしろ、キラは最終手段でいいのではないか。その前に執れる手段はいくらでもあるだろう。
「あいつを呼び出す前にラクス嬢に説得させる方がいいんじゃね?」
その方が周囲の怒りを買わずにすむのではないか。そう続ける。
「そうですね」
ニコルもそれには同意のようだ。小さく頷いて見せる。
「その前にどちらかが妥協してくれればいいだけですけど」
結局はそこに戻るのか。
「まったく……ガキじゃないんだから」
深いため息とともにそう口にするしかないディアッカだった。