小さな約束
108
まさか、ミナまでカガリと同じセリフを言うとは思わなかった。
「……ミナ様……」
彼女にここまで恨みを買っているとは、いったいなにをしたのだろうか。
「まぁ、それに関してはアメノミハシラに帰ってから考えようか」
ミナはそう続ける。
「帰るんですか?」
レイがこう問いかけた。
「安心しろ。お前も一緒に連れて行く」
即座にミナが微笑みとともにそう告げる。
「カナードも忙しくなるからの。キラの見張りが必要だろう」
その言葉にレイは頷く。
しかし、だ。キラは納得できない。
「見張りって、何!」
自分にそんなものが必要だとは思えない。言外にそう付け加える。
「必要であろう? そのようなものを作り出すようでは」
しかし、こう切り替えされては反論できない。
「それに、お前を狙ってくるものも出てくるかもしれないからな」
不本意だが、とミナは続けた。
「我らに手出しできぬ以上、一番弱いものに矛先が向かいかねん」
「確かに、僕は戦闘力皆無ですから……」
覚えればいいのかもしれないが、と小声で付け加える。
「お前はそのままでよい」
「そうだぞ、キラ」
「キラさんは俺が守ります!」
その瞬間、三人がいきなりこう主張してきた。
「でも……」
「かまわぬ。むしろ、お前にはそのままでいてもらわねばならん」
背後から不意に声が響いてくる。
「ギナ様?」
「でなければ、いざというときのストッパーがおらなくなる」
それはどういう意味なのか。キラは思わず首をかしげた。
「お前さんを守らなきゃいけないから、理性を手放さずにすむってことだろう」
ここで聞くとは思っていなかった声が耳に届く。
「フラガ大尉? どうして……」
「とりあえず、俺はサハク預かり、と言うことになったんだよ」
だから、ギナにくっついて歩いているというわけだ。彼はそう続けた。
「ギナ様?」
「本当よ。それは閉じ込めておくにはもったいないからの」
こき使った方がよかろう。彼はそう続ける。
「そうかもしれませんが……」
しかし、とキラは思いながらムウを見つめた。
「いいんですか?」
地球軍だったのに、と言外ににじませながら問いかける。
「かまわない。閉じ込められるよりは宇宙にいた方がいいからな」
地球軍にいたのは、それ以外の選択肢がなかったからだ。ムウはそう言って笑う。
「あっちに捨てられたからな。拾ってくれた相手に協力するのは当然だろ」
「……それでも、ギナ様はないと思います」
こき使われるのレベルが違う。キラは言外に付け加えた。
「まぁ、それは覚悟している」
仕方がないだろうな、と呟く彼に、周囲が生暖かい瞳を向けていた。