小さな約束

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 目の前のモニターに表示された内容に、さすがのカナードも顔色を変える。
「何があった?」
 それに気づいたらしいミナが即座に問いかけてきた。
「ご自分の目で確認してください」
 説明しても納得してもらえるかどうか。
 それ以前に、自分が冷静に説明できるかどうかがわからない。
「お前がそんなセリフを言うとは珍しいな」
 こう言いながら彼女は歩み寄ってくる。そして、カナードの肩に手を置いて体を支えながらモニターを覗き込んだ。
「……なるほど」
 確かにこれは、と彼女も呟く。
「だが、情報は必要だな」
 これが真実ならばとミナは続ける。
「連中が何を望んでいるのか。想像がつく」
「あいつらが望んでいることなんて一つしかないと思うが?」
 自分達に都合のよい存在を増やすこと。そして、利権を増大させること。それしかないのではないか。
 そのために連中がほしがっているものが何なのか。カナード達は知っている。
「だからこそ、我らはキラを隠さねばならぬ」
 あの子が鍵だから、とミナは言外に告げた。
「どうしてあの人達は、俺にその役目を与えてくれなかったんでしょうね」
 そうすれば、キラはカガリとともにいられたはずだ。
 あの二人は一対の存在。ミナとギナのようにともに過ごすべきだったのに、と呟く。
「仕方があるまい。あのとき、お前はあの場におらなんだ」
 だからこそ、彼らはまだ生まれたばかりのキラに鍵を預けるという選択肢しか残されていなかったのだ。
「それに関しては、我らの責任よの」
 ミナはため息とともに言葉を口にする。
「あのとき、お前をあそこから引き離したのは我らだからな」
 もし、あの場に自分達がいたら、もっと別の方法を採れたのかもしれない。
「今更言っても仕方がないことだがな」
 過去には戻れないのだから。彼女は言外にそう告げる。
「確かに、目の前の厄介事を片付けることが優先ですね」
 バカがすぐに動けないように、とカナードは言い返す。
「連中の思惑通りにはさせんさ」
 ミナの言葉にカナードは頷く。
「しかし、キラの力が借りられないのは辛いですね」
 キラであればすでに必要な情報を入手できているだろう。
 しかし、それはあのこの目に不穏な世界を見せることにもなってしまう。それだけならばまだしも、生まれの秘密まで見つけてしまうのはまずい。
 だから、自分一人で何とかしなければいけないのだ。
「カナード……」
「愚痴ぐらいは言わせてください。これよりも厄介なデーターが山ほどあるんですから」
 ついでに見たくないようなデーターも、と彼は続ける。
「まぁ、脅迫ぐらいには使えるでしょうけど」
 あまりあれは使いたくない。そう続けたことでどのような内容なのかミナにも想像がついたらしい。
「後でギナに渡しておけ」
 えぐくてすてきな報復方法を考えてくれるだろう。彼女はそう言った。
「……そうします」
 これについてはそれでいい。
 問題は目の前のデーターだ。
「さて。デュランダルがいつ帰ってくるか。それを確かめてこないとな」
 これには彼も巻き込むべきだろう。そう言うミナに、カナードは小さく頷いて見せた。

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最遊釈厄伝