小さな約束

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「何なんだ、こいつらは!」
 目の前にいるのが地球軍の新型だというのはわかっていた。
 しかし、だ。
 この動きは何なのか。
『どう見ても、僕らと同レベルですね』
 身体能力が、とニコルが言う。
「とりあえずお前は手を出すな。このままこの光景を記録していろ」
 イザークはそう言い返す。
「きっとそれが役に立つ」
 万が一のことがあっても、と彼は続けた。
『イザーク……』
「もちろん、ここで死ぬ気はない。ただ、何があるのかわからないのも戦場だろう」
 こう言いながら、イザークはビームライフルの照準をロックしようと操作する。
 だが、相手の方が早い。
「ちっ!」
 気に入らない、と心の中で呟く。
 同時に、本当に相手はナチュラルなのか、と冷静に相手の動きを分析する。
 どう見ても、相手の反射神経は自分達と同レベルだ。もちろん、そのようなナチュラルがいることも知っている。実際、その中の一人には会った。
 だが、目の前の連中は彼らとは違う。
 どこがと言われるとわからない。
 しかし、間違いなく『違う』とささやく声がある。
 あれらは異質だ。
 自分達とは似て非なる存在だ。
 ナチュラルとは違う。
 さげすもうと憎もうと、彼らが自分達と同じ存在だと思える。カガリといったオーブのナチュラルはなおさらだ。
 それなのに、どうして連中だけ、と思う。
「後で隊長に相談だな」
 そのためにも、ここは生き延びなければいけない。
「ディアッカ!」
『準備できてるぜ』
 腐れ縁の相手に声をかければ、すぐに言葉が返ってくる。
『オロール達も配置についている』
「わかった」
 ならば、とイザークは嗤う。
「作戦開始だ」
 この言葉とともに彼らはそれぞれの役目を果たすために動き始めた。

「……何故、だ?」
 状況は連中に有利だったはずだ。
 それだけ、完璧な連携だったと言っていい。
 こちらにミゲルがいてくれれば、あるいは対等にやり合えたかもしれない。しかし、とイザークは唇をかむ。
「何故、連中はここで引いた?」
 その理由がわからない。
「勝ちを譲られたわけではないだろう」
 何か連中の側に不具合がでたのではないか。
 しかし、それがわからない。
 わからないから気に入らない。
 だが、それがわかればこれに関する解決策が見つかるはずだ。
 早くクルーゼが合流してくれればいい。
 イザークはそう考えていた。

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最遊釈厄伝