小さな約束

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 頬を膨らませたままのキラを連れてカナードが去っていた。
「後で機嫌を取るのが大変かもしれぬな」
 ミナはそう呟く。
「わかっていてキラを怒らせたのではありませんか?」
 ラクスがそう問いかけてくる。
「その方があの子が素直に帰るからな」
 年下の相手に悟られるとは思わなかった。心の中でそう呟きながら言葉を返す。
 同時に、この少女がキラのそばにいることは喜ばしいとも言える。
「……キラには聞かせられない話ですの?」
「あの子は国政にかかわっておらぬであろう?」
 オーブはもちろん、プラントでもだ。
 本人が希望しても周囲が止めるであろう。
「確かに。キラには似合いませんわ」
 ラクスもあっさりと頷く。
「キラに腹芸は無理だからな」
 カガリもそう言う。
「それに、あいつには自由に生きて欲しい」
 好きなときに好きなところに言って、いろいろなものを見て欲しい。彼女はそう続けた。
「お母さんみたいですわよ、カガリ」
 ラクスがそんな彼女をからかう。
「せめて姉にしてくれ」
 この言葉に苦笑が浮かぶ。考えてみればキラとカガリは誕生日も一緒なのだ。さすがに『母』扱いはかわいそうか。
「……妹かもしれませんわ」
 ラクスが少し考え込んだ後にこう告げる。
「お前な」
「カガリもあまり腹芸にはむいていませんわね」
 ラクスがそう言って笑う。
「このくらいは笑って流さないといけませんわ」
 そう彼女は続ける。
「……無理だな」
 だが、カガリはあっさりと否定の言葉を口にした。
「キラのこととなれば、ギナ様だって表情を変えるのに」
 それについて小言を言おうかと思ったが、こう続けられては無理だ。
「……まずは、あれからしつけなければならぬか?」
 代わりにこう呟く。
「いや、無理だな。それこそ、いっぺん殺さなければあれの性格は治らん」
 キラも本当に厄介なくらいあれに好かれたものだ。そう付け加えて苦笑を浮かべた。
「……それにしても、厄介なものに好かれるの、あの子は」
 さらにそう呟く。
 そんな彼女のつぶやきを気にすることなく、カガリとラクスは口論とも言えないじゃれあいを続けている。
「二人とも。そろそろやめておけ」
 人目に付く、と告げた。
「……そうだな。私はかまわないが、お前は困るだろう、ラクス」
「そうですわね。不本意ですが仕方がありません」
 もうしばらく《ザフトの歌姫》は必要だろう。彼女はそう告げた。
「わたくしとしては、出来るだけ早く返上したいのですが」
「戦争が終わって、状況が落ち着くまでは無理だろうな」
「そうですわね」
 この二人が仲がいいというのは、キラにとってはプラスだろう。しかし、一番厄介な存在が目の前にいるというのも否定できない。
「キラも大変だな」
 もっとも、あの子はそんなことは気にしないだろうが。そう呟いていた。

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最遊釈厄伝