小さな約束

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「……こう言うルートもあるんですね」
 ニコルが頬を引きつらせながらこう言った。
「何か、セイランのマザーからだと簡単にいけたんだよね」
 それにキラはこう言い返す。
「でも、地球軍からの方だとセキュリティがないも同然だったよ」
 さらに言葉を重ねれば、何故かカナードとカガリの頬が引きつっている。
「どうしたの?」
 それに気づいて、キラはこう問いかけた。
「つまり、オーブの機密は地球軍から見放題だと?」
「……セイランのマザーに入っていればね」
 でも、とキラは続けた。
「サハクとアスハはもちろん、モルゲンレーテのライブラリは閲覧できなかったよ」
「試したんだ」
 カガリがため息とともに言葉を口にする。
「入れるようなら対策を取ってもらわないとだめでしょう?」
 カナードに連絡を取れば何とかしてくれるだろう。そう考えていた、と素直に告げた。
「あぁ、そういうことか。それならば納得」
 あっさりとカガリは引き下がる。
「確かにな」
 カナードもこう言うと頷いて見せた。
「ただ、そのデーターは欲しいが」
「ログは取ってあるから、後で渡すよ」
 プラントに戻らなければ無理だが、とキラは続ける。
「それに関してはかまわない。必要なのはセイランと地球軍の癒着の証拠だからな」
 カナードの言葉にうなずき返す。
「……キラさん」
 こちらの話が終わったと判断したのだろう。ニコルが口を挟んでくる。
「何?」
「すみませんが、お手伝いをお願いします。地球軍がどれだけあの五機のデーターを持っているのかを確認したいのですが」
 彼はそう続けた。
「他の機体もないとは言えないだろう」
 さらにカナードがこう言ってくる。
「確かに。今までその可能性は否定していたが……ないとは言い切れないな」
 ミゲルもそう言って頷く。
「とりあえず、出来るところまででいいぞ」
 無理はするな、とミゲルは言葉を重ねる。
「わかってるよ」
 それにキラは言葉を返す。
「でも、無理してないから」
 さらにそう言葉を重ねながらキーボードを叩く。正式な権利を持ったものがマザー内のライブラリを検索していると認識させるためだ。
 そこまではよくしているから慣れている。
 問題はここからだと言っていいだろう。
「やっぱり、普通の権限の持ち主じゃだめだね」
 だとするならば、と呟きながら今度は別のコマンドを打ち込む。
「キラ?」
「多分、これで大丈夫」
 次の瞬間、予想通りの画面が表示された。
「……後三機完成している?」
 そこに表示されたデーターを見て、キラはそう呟く。
「何だと!」
 それは間違いなく厄介事の始まりだった。

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最遊釈厄伝