小さな約束
93
「それともう一つ、頼みがあります」
カナードがそう言う。
「何かな?」
「こいつにハッキングの許可を。もちろん、俺が監視をします」
言葉とともに彼がキラの頭に手を置いた。
「何で、そんな危険なことを……」
ミゲルがため息とともにそう呟く。
「俺と同レベルのハッカーがこいつだからだ」
それに、と続ける。
「すでに地球軍のマザーへはルートを確保しているはずだしな」
そうだろう、と彼はキラの顔を覗き込む。
「何で知っているの?」
そうすれば、キラは驚いたようにこう言い返してきた。
「……マジでそんなことをしていたのかよ」
あきれたようにミゲルが呟く。
「だって、キラですもの」
ラクスが微笑みながらこう言い返した。
「あぁ。キラだからな。機会があればいつでもやるだろう」
さらにアスランも同意の言葉を口にする。
「何と言っても幼年学校時代にザフトのマザーに侵入した実績があるし」
「いつだよ!」
とっさに突っ込みを入れたのはミゲルだ。
「俺は知らないぞ!」
さらに彼はそう付け加える。
「……アメノミハシラにいたとき」
キラが小さな声でそう告げた。
「あぁ。アスランがお馬鹿すぎたあの時期ですね」
ラクスが楽しげな口調でそう言う。その瞬間のアスランの顔色の変化は見ていてそれなりに楽しめた。
「だって……暇だったし、ギナ様が『いい』って」
怒られるときは自分が怒られる、そう言っていたのだ。キラはそう続ける。
「あの方らしいな」
そうやってキラをたきつけたのか。カナードはそう呟く。
「後でミナさまに相談だな」
ギナがキラに余計な事を教えないように、と心の中だけで付け加えた。
「しかし、今は使えるものは何でも使うべきだろう?」
地球軍の状況を知るためにも、とカナードは言う。
「確かに、それは重要だろうね」
ラウもそれには同意をしてくれた。
「キラもかまわないかな?」
そのまま視線を移動させる。
「僕はかまいませんけど……」
でも、本当にそんなものが役に立つのか。キラの瞳がそう問いかけている。
「使える使えないは、実物を見てからでないとね」
それはもっともなセリフだ。
「なら、これから確認しますか?」
「そうさせてもらおう」
キラの言葉にラウが頷く。
「ミゲルとニコル。君たちもつきあいたまえ」
さらに彼はこう指示を出す。
「何故、その二人だ?」
「ミゲルは言わずもがなだろう。ニコルはこのメンバーの中で一番、情報管理に優れている」
そう言われれば納得だ。
「必要ならそいつに引き継がせる、と言うことか」
「あまりキラを戦争にかかわらせるべきではないだろう?」
彼の言葉に、カナードは「そうだな」と頷いて見せた。