小さな約束
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キラが持ってきたプログラムはすぐに解析に回された。同時に、アークエンジェルのシステムもすぐに調べられる。
「やはり、同じものがありました」
ラウの元にその報告があったのは、今だ。
「そうか」
つまり、地球軍は自軍の兵士も信用していなかったと言うことか。
それとも別の理由があると言うことなのか……と呟く。
「それで? どのような動きをするのかな?」
トロイの木馬系と言うことは、あちらからの信号でなにかが起きると言うことだろう。
「……データーの破壊でしょうか」
後は、自爆か。解析したらしいクルーがこう言い返してくる。
「あちらの艦の自爆装置は?」
「ミゲルとアスランが物理的に作動不能に追い込んでおりましたので、現在の所は被害がありません」
「……その判断はほめておこう」
それがなければ、自分達にも多大な被害が及んだデア牢固とは想像に難くない。
「しかし、これは交渉材料になるね」
彼らとの、とラウは続けた。
「そうですね」
アデスがそう言って頷く。
「後は本国とサハクとの話し合いの結果かな」
さてどうなるのだろうか。ラウはそう呟いていた。
目の前にいるのはどちらだろうか。レイは一瞬そう考える。
「……ロンド・ミナ様?」
だが、身にまとっている空気がまだ柔らかいことに気づいて、すぐにこう呼びかけた。
「久しいの」
そうすれば彼女が柔らかく微笑んでくれる。
「お久しぶりです」
それに笑みを返しながらレイはそう言い返す。
「とりあえず、茶を淹れてくれないか? あれはまだ帰らぬのであろう?」
打ち合わせをしようと思ったのだが、と彼女は続けた。つまり、今後のことをギルバートと話し合うためにお忍びでここに来たと言うことか。すぐにそう判断をする。
「わかりました。テラスでかまわないでしょうか」
花が見頃だ、と付け加えた。
「キラさんのお気に入りの場所です」
「……ギナが贈った花か?」
「はい」
キラが喜んで世話をしていた、とレイは笑みを深める。
「それはよかった。あれのセンスはあてにしていなかったのだが……キラが喜んでいるならよかろう」
案内してくれ、と彼女は口にした。
「こちらです」
こう言うとレイは先に立って歩き出す。
「……ふむ。なかなかよい家だな」
周囲を見回しながらミナがこう呟いている。
「キラも気に入るはずよ」
これはほめ言葉なのだろう。
「ありがとうございます。ギルも喜びます」
もっとも、とレイは心の中で呟く。ここがこんなに居心地がいいのはキラの存在があるからだろう。キラのために、とみんなが心を砕いたからだ。
それをほめられたのは嬉しい、と素直に思う。
「あれよりもお前の方ががんばっているようだがな」
もっとも、とミナは続ける。
「あの子はしばらくここには帰せぬがな」
ここも安全ではないだろう。彼女はため息とともにそう続ける。
「……ミナさま……」
「ここではしがらみが多すぎる。あれらとの話し合い次第だがな。お前も連れて行くことになるだろう」
それならば問題はない。自分にとって重要なのはキラのそばにいてキラを守ることだ。
しかし、と思う。
「プラントにもブルーコスモス関係者がいると言うことですか?」
「そういうことだ」
厄介だな。そう付け加えられた言葉にレイも頷いて見せた。