小さな約束

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 艦内の制圧が終わるまで気は抜けない。ミゲルはそう考えながらハッチから内部へと侵攻する。
 自暴自棄になった連中が 人質に何をしでかしてくれるかわからないからだ。
「いっそ、ガスで無力化をすればいいんだろうが……」
 だが、それでは後始末が厄介だ。何よりも、キラ達が巻き込まれる。
「キラは許してくれるだろうが、な」
 問題はラクス達だ。
 特に怒り狂ったラクスをなだめるのは難しい。それよりは多少危険でも自分達で突入した方がマシだ。
「ミゲル!」
 そんなことを考えていれば、アスランのいらだたしそうな声が耳に届く。
「騒ぐな。見つかるぞ」
 そんな彼をこう言って黙らせる。
「それよりもラクス様の居場所の特定は?」
 ばれないように、そして連中よりも先に二人の元にたどり着かなければいけないのだ。
「……できている。ただ、内部の構造まではわからない」
「軍艦の構造はそう大差ないだろう」
 環境に近い中央部分に士官室がある。キラ達はおそらくそこにいるはずだ。
 問題は、誰にも見つからずにいけるかどうかだろう。
「後はお前のそれが細かな位置の修正に役立ってくれる」
 だから、ちゃんと方向を指示しろ。言外にそう続ける。
「早く行かないと、間違いなくラクス様が切れるからな」
 今ですら彼女が怒りをためているはずだ。それをさらに増幅するようなことだけは避けたい。ミゲルはそう続けた。
「それは……そうだな」
 アスランの表情がこわばったのは錯覚ではないだろう。
「その恐怖をよく知っているから、イザーク達も失敗しないだろうし」
「あいつらもラクスの地雷を踏んだことがあるからな」
 あれは怖かった、とアスランは呟く。それはキラを追いかけ回していた頃のことを思い出したからだろう。
「俺から言わせれば、全部自業自得の一言ですむ内容だがな」
 そう言いながらゆっくりと歩き出す。
「……悪かったな」
 当然、アスランもだ。
「できれば、俺だって知りたくなかったよ」
 アスランのそんなぼやきを聞きながら、デッキを抜け、居住区らしき場所へとたどり着く。
 そこでミゲルは思わず足を止めた。
「重力がある?」
 嘘だろう、と言いたくなる。いったいどうやっているのだろうか。
 プラントの技術力でも不可能ではないと聞いている。ただ、エネルギーの消費が大きいために実用にまでは至っていないのだとか。
 それをどうやって解消したのだろう。
「まぁ、それについては後で、だな」
 この艦を掌握した後で技術部に任せてじっくりと調べてもらえばいい。
「こちらの方向でいいんだな?」
 それよりもキラとラクスだ。
「そう表示されている」
「わかった」
 ならば、と続けようとする。だが、その言葉がつられることはなかった。
「……ようやくザフトが動いたか」
 背後からいきなり声がかけられたのだ。
「誰だ!」
 反射的にナイフを構える。銃を抜かなかったのは、音で敵を集めることを恐れたからだ。
「ミゲル・アイマンとアスラン・ザラか」
 だが、次の瞬間、相手の口から自分達の名前が出た。
「まぁ、無難な人選だな。キラ達の顔見知りという点では」
 彼はさらにそう続ける。
「お前は、キラの知り合いか?」
 よく見れば軍服を着てはいない。
「サハクの関係者、のようだな」
「なるほど。判断能力もそれなりと。そいつに比べればましか」
 相手はこう言って頷く。
「付いてこい。二人の所まで案内する」
 その言葉をどこまで信用していいものか。だが、今は付いていくしかない。ミゲルはそう判断すると彼の方へと足を踏み出した。

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最遊釈厄伝