小さな約束

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「キラさんはまだ、助け出せないのですか?」
 久々に顔を合わせた瞬間、レイがこう問いかけてくる。
「ラウ達にもいろいろと都合があるのだよ」
 そんな彼をなだめるかのようにギルバートは言葉を口にした。
「それに、キラのそばには今、カナード君がいる。心配はいらない」
 他にもあの子の味方がいる、と続ける。
「カナードさん、ですか?」
「あぁ。サハクの都合もあるようだからね。あきらめてくれないかな?」
 まだ学生の身分なのだし、と告げればレイは悔しそうな表情を作った。
「どうして、俺はキラよりも年上に生まれなかったのでしょうか」
 その表情のまま、彼ははき出すようにそう告げる。
「いろいろと都合が合ったのだよ」
 受精卵の調整等を含めて、と隠すことなくギルバートは口にした。
「それに、年上ではキラのためにならないと判断したからね」
 キラの成長のためには年下の存在がいた方がいい。それに適任だったのがレイの存在だ。
「キラより年上ならば、君はこれほどあの子のそばにいられなかっただろうね」
 年上であれば、おそらく一緒にプラントに来られなかっただろう。カナードのようにサハクの元で力をつけていたに決まっている。
「それは……いやですね」
「だろう? だから、妥協しなさい」
 弟ポジションで、とギルバートは笑う。
「家族であれば、どのような時でも縁は切れないよ?」
 キラの性格であれば、と続ければレイは納得したらしい。
「後は、実力をつけるのだね。それこそ、ラウを蹴落とすぐらいの」
 あるいは、もう一人か。
 彼がキラと一緒にいることは、レイは内緒にしておいた方がいいだろう。
「……もちろんです」
 ギルバートの予想通り、レイの意識はそちらに向いたらしい。
 これならば大丈夫だろう。
 後は、キラが無事に戻ってくれば言い。そう呟いていた。

 アスランからの報告に、誰もが勢いづく。
「確実に、キラは保護できるな」
 イザークがそう呟いた。
「問題は、だ」
 それを耳にして、ミゲルは口を開く。
「ラクス様が乗っているかどうか、だ」
 その瞬間、室内の空気が凍った。特に、アスランの表情の落差は大きい。
「事前に確認できればいいんだが」
 今のキラが通信手段を持っているとは限らない。だから難しいだろう。目の前の光景を無視してミゲルは言葉を重ねた。
「事前に潜入するのも難しいでしょうし」
 一番最初に衝撃から抜け出したらしいニコルがこんな言葉を返してくる。
「だからと言って、ラクス嬢の存在を確認しておかないとそれこそまずいか」
 ディアッカもそう言って頷く。
「何か方法はないのか?」
 イザークがまだ固まっているアスランへと問いかけた。
「何故、俺に聞く」
 フリーズが溶けたらしいアスランがこう言い返してくる。
「お前の婚約者だろうが、ラクス嬢は」
 イザークの言葉にディアッカ達も同意をするように頷いた。
「……自分で選んだわけじゃない」
 ため息とともにアスランはこう呟く。
「もっとも、居場所を確認するだけならば、方法がないわけではない」
 彼はそう続けた。
「どんなだ?」
 ミゲルがすかさず問いかける。
「ラクスに渡したマイクロユニットに位置特定装置が付いている。それで確認できるはずだ」
 もっとも、彼女の手元にあればだが。アスランはそう続けた。
「可能性があるならすぐに確認してくれ」
 その上で作戦を立てたい。そうでなければ、何が起こるか怖い、と続ければアスランは頷く。
「三十分くれ」
 この言葉に、ミゲルはすぐに許可を出した。

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最遊釈厄伝