小さな約束

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「カガリ!」
 いきなり、足元のパネルがカガリごと落下した。だが、この程度なら何とか着地できる。
「大丈夫だ!」
 頭の上から降ってきたキラの声にそう言い返す。
「適当なところから上がる。まっすぐに進んでくれ!」
 おそらくそれで合流できるはずだ。彼女はそう付け加える。
「わかった。ただし、無理はするな」
 それにカナードが言葉を返してきた。
「だめなときにはいつもの手順でエマージェンシーを出して適当に隠れていろ。迎えに行く」
 いいな、と彼は続ける。
「はい」
 確かに、それが一番だろう。
「ここで下りて、みんなで移動した方がよくないですか?」
 だが、キラは納得できないというようにこう言い返してくる。
「別れるとまずいような気がします」
 さらにこう付け加えていた。
「カガリなら大丈夫だ。殺しても死なん」
 そのセリフは何なのか。カナードにそう突っ込みたい。
「それに、俺が命じられたのはお前の保護だからな。カガリについてはついでだ」
「でも、カガリは女の子でしょう?」
 キラはそう言い返している。だが、何故か『カガリがナチュラル』だと言うことでは心配していないらしい。
 それはいいことなのだろうか。
「……仕方がないな」
 キラの意志が固いと判断したのか。カナードの方が折れたようだ。それとも、キラが実力行使に出ようとしたからかのか。
「カガリでも下りられたとは言え、気を付けろ」
 その注意のしかたは何なのだろうか。カガリですらそう思うのだ。キラには尾も切り不本意なのではないか。
「大丈夫です」
「だが、万が一と言うこともあるからな」
 即座に反論をするキラをカナードがたしなめている。
「……やっぱり、私に対するのと態度が違うな」
 キラに対してはものすごく甘い。自分もキラに甘いから当然と言えば当然だろう。
 しかし、何故、と言う気持ちもある。
「下にいるのが地球軍ならばいいが、ザフトだと困るだろうが」
 もっとも、カナードのセリフであっさりと解消するあたり、自分も単純なのかもしれない。
 確かに、キラがザフトに手を出すのはまずい。裏切り者と言われかねないのだ。
 そして、現状ではどちらと遭遇するかわからない。
「過保護にもなるか」
 その時にオーブで保護するのは簡単だ。
 だが、それはキラに今までの生活を捨てろというのと同じことだ。本人の選択ではない以外に、それを強要できない。
 一緒にいたいという気持ちは嘘ではない。だが、今までのようにたまに会えればそれで十分だ。
 カガリがそう考えていたときだ。
「……誰か来る?」
 背後から足音がしてくる。
「二人とも、こちらに来るな!」
 反射的にカガリは叫ぶ。
 ナチュラルである自分であれば地球軍相手でも何とかなるだろう。しかし、コーディネイターである二人ではどんな扱いをされるかわからない。
 だから、状況がわかるまで上にいてもらった方がいい。
「わかった」
 カナードの冷静な声が返ってくる。
 敵でなければいいが。そう考えながら、カガリはとりあえず瓦礫の影へと身を隠した。

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最遊釈厄伝