小さな約束

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 ミゲルは一瞬、己の目を疑った。
「……まさか……」
 民間人らしき人影が三つ、モニターの端を移動している。それだけならば、まだ、戦渦に巻き込まれた人間だろうと無視することができた。もちろん、極力彼らを傷つけないように配慮はするが。
 しかし、だ。
 自分の目が認識したことが現実ならば、それでは生ぬるい。
「キラ?」
 反射的に対象物を拡大する。
「マジで、本人だ」
 避難場所を探しているらしい男女三人組。その中の一人は間違いなく自分達が探していた相手だった。
「とりあえず、地球軍からは逃げ出したか」
 だが、このままでは間違いなく戦闘に巻き込まれる。
「俺が保護できればいいんだろうが……」
 キラひとりであればそれも可能だった。
 しかし、他の二人が問題だ。
「隊長に確認する暇はないな。どうするか」
 見つけてしまった以上、無視するわけにも行かない。
「とりあえず、安全な場所に避難するまではフォローしておくか」
 今はそれ以上のことは難しいだろう。
「作戦中でなきゃな……先に侵入した連中に保護を依頼しておくか」
 彼らならば、きっとうまくやってくれる。
 それに、自分達との関わりもすぐにはばれないだろう。
「キラはしばらく、サハクにいた方が良さそうだしな」
 その方が安全ではないか。もっとも、他の者達がどう判断するかはわからない。特に、ラクスが、だ。
「って……あいつら!」
 キラ達に向かって照準を合わせている地球軍の姿がモニターに映し出されている。
「民間人まで狙うのかよ!」
 言葉とともにジンを移動させた。
 間一髪、彼らと地球軍の間に割り込むことに成功する。
 自分の行為に驚いたようにキラが視線を向けて来た。
 しかし、ここで声をかければ自分達の関係が地球軍にばれる。
 それとも、いっそ、三人まとめて保護をするか。ミゲルが悩んでいたときだ。一緒にいた男がキラの腕をつかむと物陰へと駆け込む。もう一人の少女もその後に続く。
 だが、彼女は不意にミゲルのジンを見上げると任せろというように手を軽く上げて見せた。
 つまり、彼女達は自分がキラの知り合いであると気づいたと言うことか。
「そういえば、オーブに知り合いがいたな」
 キラには、とミゲルは口の中だけで付け加える。ひょっとしたら、あの二人がそうなのかもしれない。
「いい奴らのようだな」
 きっと、ラウ達も公認なのだろう。しかし、アスランはどうなのだろうか。
「……ちょっと話をしたい気はするが、後だな」
 今はこちらを何とかしなければいけない。
「それにしても、連中はまだ終わらないのか?」
 アスラン達の作戦が終わらなければ自分達もここから離脱できない。
 逆に言えば、それだけキラ達に危険が及ぶ問うことだ。
「自分達で手を上げたんだ。きっちりと片をつけろよ」
 失敗したらただでは済まさない。そう続ける。
 もちろんフォローはきっちりとしてやるが、と付け加えた。
『ミゲル』
「イザークか」
 不意に通信が入ってくる。
『こちらは完了した。これから離脱する』
「了解」
『ただし、アスランとラスティが別行動になっている。あちらの状況はわからない』
 難易度はあちらの方が上だろう。そうイザークは告げる。
「わかった。それは何とかする。お前たちは早々に離脱しろ」
 それだけこちらの負担が減る、と言外に告げた。
『了解。では、また後で』
 言葉とともにイザークは通信をきる。
「聞こえただろう。フォローを頼む」
『了解』
 オロールがすぐに言葉を返してきた。これで彼らの方は大丈夫だろう。
 問題はアスラン達の方だ。
「気を抜いてなきゃいいが」
 言葉とともにミゲルは意識を周囲へと戻した。

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最遊釈厄伝