小さな約束

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「……やっぱり出てきやがったか」
 近づいてくるプレッシャーにも似た感覚に、ムウは眉根を寄せる。
「とりあえず、艦から……」
 引き離さないと、と続けようとしたその瞬間だ。
「……被弾した、だと?」
 飛び込んできた報告に『まずい』と呟く。いくらカナードがいるとは言え、直撃を受けたらただではすまないはず。
 もっとも、とすぐに思い直す。
 二人がいる場所はあの輸送艇の中でも位置にを争うほど安全な場所だ。どんな角度から撃たれようとも直撃されることはない。
 だから、二人は無事に決まっている。
 そもそも、カナードは殺したって死なない。キラがそばにいればなおさらだ。
 自分にそう言い聞かせるようにムウは心の中でそう繰り返す。
「ともかく、近くにいるザフトは排除だな」
 それだけあの二人が安全に逃げ出せる可能性が高くなる。
「……ひよっこどもは……全滅か」
 移動中であればそれも当然か、とあっさりと納得する。
「あいつらも、メビウスがあれば、それなりに戦えたんだろうがな」
 しかし、手元に武器がない状況ではただの的でしかない。
 それに、と続ける。
「いくら機体が新型でも、使いこなせなきゃ宝の持ち腐れだよな」
 それはザフトの連中も同じだ。そう呟きながら、ガンバレルを操作する。
「悪いが、それに手出しされた以上排除しないとな」
 そのまま照準を合わせると、攻撃を加えた。
 当然のように、相手の機体が目の前で霧散していく。
「……あれのパイロット、キラの知り合いじゃないよな?」
 ふっとそんな疑念がわき上がってくる。
「だとしても、我慢してもらうしかねぇな。ここは戦場だし」
 自分も命は惜しい。そう付け加えたときだ。覚えのありすぎるプレッシャーが近づいてくる。
「やはり出てきたか」
 全く、来なくていいものを。そう思うが、彼の立場であれば出てくるのが当然だ。
「仕方がない。しばらく付き合ってやるか」
 いろいろと怖いが。そう呟く自分の口元が緩んでいることをムウはもちろん自覚していた。

 いったいここはどこだろう。
 カガリはそう考えるとため息をつく。
「こんな時に迷子だと?」
 自分でもあきれるしかない。だからと言って、現実から目をそらしている暇はないのだ。
「ともかく、ここがどこかを確認しないと」
 そして、シェルターなり脱出ポッドなりを探さなければ。
「私は、ここで死ぬわけにはいかないんだ」
 そう呟くと、周囲を見回す。
 落ち着けば壁に取り付けられている非常用の端末を見つけることができた。これ幸いと現在位置を検索しようとする。
「……システムが死んでる?」
 物理的なのか、それともハッキングの結果なのか。モニターに映し出されている表示が変化することはない。
「使えない」
 思わずこう呟いてしまう。
 その時だ。誰かがこちらに近づいてくる気配がする。しかも、足音から判断して複数だ。
「聞くか」
 敵という可能性も否定はしない。
 しかし、それでも民間人までは攻撃してこないだろう。
 そう考えてそちらに足を向ける。
 だが、それはある意味、地獄への第一歩だった。
「何故、お前がここにいるんだ、カガリ」
 獄卒と言えるべき存在が目の前にいる。その斜め後ろにはキラのかわいい姿があった。
「それはこちらのセリフです!」
 即座にこう言い返した自分をほめるべきだろうか。カガリはしばらくそう悩むことになってしまった。

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最遊釈厄伝