小さな約束

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 その感覚にラウは小さな笑みを浮かべる。
「まさかこんな所にいるとはな」
 行方をくらませたと思えば、と彼は続けた。
「なにをしていたのか。きっちりと説明させたいところだが、今は無理だろう」
 それよりも優先しなければいけないことがある。
「……アスラン達は役目を果たしているかな?」
 キラのことがあるから不安と言えば不安だ。
 だが、事前にキラのことは手を打っていると伝えてある。それをどこまでシンジいるかにによって、今後の対応を考えればいいことだ。すぐにそう考え直す。
「カナードであれば確実にキラを守れよう」
 そのための手助けぐらいはできるだろうが、と続ける。
「あれもそばにいるようだしな」
 文句を言うのは後にしておこうか、と嗤う。
「もっとも、出てきたときはただで済まさないが」
 お仕置きは必要だろう。
 彼の判断が間違っていたとは思わない。それなりの理由があったことは認めてやる。
 しかし、何の連絡もなく消えてこちらを心配させたことは事実だ。
 それに関するイヤミぐらいは許されるのではないか。
 もちろん、作戦を成功させる方が優先だが、と自分に言い聞かせる。
「キラを守るために力を得たつもりだったが、それが足かせになるとは思わなかったよ」
 困ったものだ。そう呟きながらラウは移動を開始する。
 そんな彼の背後でメールの着信を告げるようにディスプレイが瞬いていることに誰も気がつかなかった。

「どういうことなんだ、これは……」
 カガリは目の前の光景に言葉を失う。
 しかし、肌を焼く暑さが、これが現実だと教えてくれた。
「だから、地球軍なんかに協力するな、と言ったんだ」
 連中は何の関係のない者達を巻き込んでもかまわないと考えている。むしろ、これ幸いと自分達の盾にしようとするのではないか。
「……ともかく、シェルターに入らないと」
 そんな考えを振り切るかのようにカガリはそう呟く。
 自分はアスハの後継だ。だから、何が何でも生き残る義務がある。それは父だけではなくサハクをはじめとする者達からも言い含められていた。
 それでも、だ。
 目の前でオーブの民が傷つけられている光景は見ているだけで辛い。
「……今回のことも、後でしっかりと責任を取らせてやる」
 地球軍に、と続ける。もちろん、ザフトにもだ。
「それ以上にセイランには責任を取らせないとな」
 そのためにも、自分はここで死ぬわけにはいかない。そう呟くとカガリは体の向きを変える。
「さて……どこにシェルターがあるか」
 市街地のそれは避難する人間が定められているはずだ。しかし、まだ宇宙港に近いここであれば、他の地域からの人間用に余裕を持たせたシェルターもあるはず。
 それを探すしかないだろう。
 しかし、と付け加える。
「このタイミングというのはいいのか悪いのか……どちらだろうな」
 自分がこの目で見ている以上、言い逃れはできないはずだ。
 そのためにも、自分は生き残らなければいけない。
「……まずは、戻るか」
 不本意だがと呟くとカガリは歩き出す。
 そんな彼女の背後でまた一つ爆音が響いていた。

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最遊釈厄伝