小さな約束

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 相手の艦が着岸したのは確認した。
 しかし、どうしたことかそれ以上の動きはない。作業をするべき者達の姿もそこにはなかった。
「……何かトラブルでもあったか?」
 アスランはそう呟く。
「さぁな」
 即座にディアッカがこう言ってきた。
「それよりも、あれを爆破すればここは使えなくなるんじゃね?」
 さらに彼はこう付け加える。
「あれにプラントの民間人が保護されている。その民間人が下船するのを確認するまでは動くな、との指示だ」
 できれば、まだ、キラのことは教えたくない。そう考えてアスランは言い返す。
「本国経由でサハクに保護依頼を出してあるそうだ」
 さらに言葉を重ねた。
「……重要人物なのか?」
 ラスティがすかさず確認の言葉を投げつけてくる。
「……隊長が引き取っている子供の片割れ、と言えばわかるか?」
 キラ本人はまだ、プラントではそれほど重要な人物とは思われていない。それでも、キラを必要としている重要人物は多いのだ。
「隊長が引き取っている子供の片割れってことは、キラか?」
 ディアッカがそう問いかけてくる。
「あぁ。オーブに向かっている途中で乗っていたシャトルが襲撃されたらしい。脱出後、あの艦に保護されたんだろう」
 サハク経由で報告が来た。
「サハクが動いている以上、地球軍も無視はできないとは思うが……」
 動きがないと言うことは厄介な状況になっているのではないか。
「どうしますか?」
 ニコルがそう問いかけてくる。
「どうするも……作戦中だろう?」
 それに従うしかない。イザークはそう口にした。
「ただ、あれには手を出さない。今は、それしかできない」
 口惜しいがオーブに任せるしかないな、と彼は続けた。
「確かに」
 アスランはそう言って頷く。 「おそらく、あいつのことをオーブの民間人だと錯覚しているはずだしな」
 キラ達の話を総合すれば、と言葉を重ねた。
「サハクが動く、と言うことはそういうことだろう」
「そうですね」
 不本意だが、とニコルも頷く。
「俺たちが動けば、連中の目はこちらに向くか」
 その間にサハクがキラを保護してくれるかもしれない。その可能性に賭けるしかないだろう。
「ともかく、あれを確保する方が先だな」
 目の前の輸送船を攻撃できない以上、とアスランは結論を出す。
「仕方がないな」
 ため息とともにイザークが同意をする。
「では、移動を?」
「それしかないだろう。できれば、ここに監視を残しておきたいが、そのための人員もないしな」
 後はキラの運に任せるしかない。
「ミゲルも知っている。だから、大丈夫だろう」
 いや、そう思いたいだけか。
「そうだな」
 言葉とともにディアッカがアスランの肩を叩いてくる。
「行くぞ」
 後ろ髪を引かれながらもアスランはそう告げた。

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最遊釈厄伝